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父に刻印された身体
第4章 父の瞳に火を灯す夜
帰宅し、薄暗いリビングのソファで静かに向かい合う。画面を点滅させるテレビの音だけが、私たちをかろうじて「日常」に繋ぎ止める防波堤のように虚しく流れていた。
私は膝の上に広げた雑誌のページをあてもなく繰りながら、上目遣いに父の微かな揺らぎを観察する。父は明らかに挙動不審で、何度も不自然に足を組み替え、自分の袖口を固く握りしめては揉み解していた。
やがて、その張りつめた糸が切れたように、父が口を開いた。
「……あのさ」
掠れたその声は、自分の感情を持て余すように小さく震えていた。
私はめくっていた指先を止め、ゆっくりと顔を上げる。逃げ場を与えない眼差しで、まっすぐに父を見つめ返した。
「なあに、お父さん?」
わざと柔らかく、甘い鈴を転がすような声で促すと、父は何かを拒むように視線を泳がせ、喉を鳴らした。
「いや……その……」
喉の奥でもごもごと音を潰す父。私は決して畳みかけず、微小な微笑みを浮かべたまま、父が自ら檻の扉を開けるのを待った。
重たく澱んだ沈黙が、リビングの空間をじわじわと満たしていく。息さえも満足にできないほどの緊張感。けれど、その息苦しさは私にとって、極上の甘美さを孕んでいた。
この重苦しい沈黙こそが、父が必死に築いてきた理性の城壁をメリメリと粉砕している何よりの証なのだから。
そしてついに、父は逃げることを諦めたように、ゆっくりと顔を上げた。
その瞳には、父親としての倫理観と、ひとりの男として私に惹かれていく禁断の熱——これまでの人生で一度も見せたことのない、激しい葛藤の光が宿っていた。
(言わせてみせる……お父さんの口から)
私は心の中で密かに呟き、父の次の一言を待った。
私は膝の上に広げた雑誌のページをあてもなく繰りながら、上目遣いに父の微かな揺らぎを観察する。父は明らかに挙動不審で、何度も不自然に足を組み替え、自分の袖口を固く握りしめては揉み解していた。
やがて、その張りつめた糸が切れたように、父が口を開いた。
「……あのさ」
掠れたその声は、自分の感情を持て余すように小さく震えていた。
私はめくっていた指先を止め、ゆっくりと顔を上げる。逃げ場を与えない眼差しで、まっすぐに父を見つめ返した。
「なあに、お父さん?」
わざと柔らかく、甘い鈴を転がすような声で促すと、父は何かを拒むように視線を泳がせ、喉を鳴らした。
「いや……その……」
喉の奥でもごもごと音を潰す父。私は決して畳みかけず、微小な微笑みを浮かべたまま、父が自ら檻の扉を開けるのを待った。
重たく澱んだ沈黙が、リビングの空間をじわじわと満たしていく。息さえも満足にできないほどの緊張感。けれど、その息苦しさは私にとって、極上の甘美さを孕んでいた。
この重苦しい沈黙こそが、父が必死に築いてきた理性の城壁をメリメリと粉砕している何よりの証なのだから。
そしてついに、父は逃げることを諦めたように、ゆっくりと顔を上げた。
その瞳には、父親としての倫理観と、ひとりの男として私に惹かれていく禁断の熱——これまでの人生で一度も見せたことのない、激しい葛藤の光が宿っていた。
(言わせてみせる……お父さんの口から)
私は心の中で密かに呟き、父の次の一言を待った。

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