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お向かいさんは僕の先生
第1章 人殺しの息子の恋
 貴子おばさんの家は兵庫県にあった。
 兵庫県といっても神戸市のような都会ではなく、山間部のド田舎で、家の裏には山が聳え、黄金の絨毯のように稲穂が揺れる田んぼもあり、夏は用水路で西瓜が冷やしてあった。
 京都市内の町で育った僕にとって、そこは夏休みの絵日記にしやすい日本の田舎だった。
 子供の頃から見慣れている景色でもあるから、ある意味、ここが僕の故郷といってもいい。

★

 貴子おばさんの家は賑やかだった。祖父母を始め、貴子おばさん、その旦那で婿養子の弘さん、一人娘の涼花(すずか)、僕も加われば六人だ。祖父母にすれば僕は可愛い孫であり、貴子おばさんや旦那さんにすればずっと欲しかった息子みたいなもの、涼花にすればまさにお兄ちゃんである。
 食事の時は全員が集まってから「いただきます」をする家だった。
 僕も遠慮しなかった。
 たらふく飯を食って、風呂上りはフルチンで歩き回る。
 そして貴子おばさんの家は、とにかく広かった。かつて武家屋敷だったそうで、築年数は約二百年に及ぶという。
 家を囲む立派な瓦塀は白漆喰で美しかった。縁側もあり、そこから裏庭を覗けた。
 裏庭は庭園のようになっており、木々もしっかりと手入れされていた。だいぶ古びていたが「ししおどし」もあった。
 僕が与えられた部屋も十畳の和室で、襖の一枚一枚に全く読めないが、達筆の襖字が書かれていた。
 祖父母は昔から農業をしており、貴子おばさんは小学校の教諭、婿養子の弘さんは町役場で働きながら、休日は田んぼの手伝いをしていた。
 従妹の涼花はまだ小学校二年生だった。
 貴子おばさんに似た丸顔で、ぽっちゃりしていた。きっと貴子おばさんはお菓子を与えすぎだ。目は眠そうな垂れ目で、動物でいうとアライグマかパンダだ。お世辞にも美少女とは言えないが、涼花も一人っ子でずっとお兄ちゃんが欲しかったみたい。貴子おばさんによると、僕が来ることを誰よりも楽しみにしていたそうだ。
 当然、僕は涼花と同じ小学校に転校した。ちなみに貴子おばさんも小学校の先生だけど、勤務していたのは別の学校だ。
 さすがに転校初日はそれなりに緊張した。
 黒板の前に立って、前日から考えていた自己紹介をした。
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