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『帰り花の夜に』~義母の静謐なる背徳
第3章 義息~超えてはいけない境界線(2)
「久しぶりのカニ……ねえ、ママ……これってタラバガニだよね。見て……足、おっきい」

葉月はカニの足を持ち上げて、一人ではしゃいでいる。

「う~ん、めっちゃ美味しいっ。亮介もじゃんじゃん食べなよ。とってあげる……もう……パパ、それ、亮介のカニよ。パパのはこっちね」

「お義父さん、すいません。葉月って……自分で取るからいいよ」

何となく、亮介君の動きがぎこちない。目もとを少し伏せがちにして箸を進めている。たぶん、さっき二人で部屋に戻ったときに、私の苦言を長女が彼に伝えたのだろう。照れ臭いのか、恥ずかしいのか。ともかく、彼の心理が読めず、私は彼に申し訳ない気がした。

「亮介、もっと食べなよ。何で遠慮してんの……ママ、ビール無くなった~。ごめん、持ってきて」

「葉月が持ってきたら……ついでにママの梅酒もお願い……冷蔵庫に冷やしてあるから。さあ、亮介くん、カニはまだまだ沢山あるから、食べてよ」

葉月は一人で相変わらずペチャクチャと喋っている。楽しいというのもあるけれど、多分、彼女なりに周りに気を使っているのだろう。パパも長男も白々しく、黙々と箸を動かすので、葉月と亮介くんの話し相手は自然と私になる。

楽しい時間は、あっという間に過ぎていく。〆のカニ雑炊を食べて、夕食は終わった。その後、パパ、長男、亮介くんと順番に風呂に入っていく。

「ママ、今日は一緒にお風呂入ろうよ」

「久しぶりね。いいわよ」

昔からそうなのだ。葉月は大きくなってからも、私と一緒に風呂に入りたがる。体は大人になっても、心の底は甘えん坊気質のまま。葉月と風呂に入るときは決まって、彼女の恋話や交わりの話になる。それを聞いてあげるのも、親の役目だと思う。だから、風呂での裸の付き合いは、私にとってとても大事なものだった。

私の母が私に言った言葉がある。それは今でも、私の人生の指針になっている。

「あなたが傷つかない程度で、たくさん遊びなさい。そうして男を見る目を養ってから、人生のパートナーを見つけなさい」

この言葉を、葉月がまだ十四か十五歳の思春期の頃から、機会があるごとに言い聞かせてきた。匂いがしなくなる洗い方、避妊の方法、口づけの仕方や体位、男が喜ぶ交わりの形——私が大事だと思うことは、できるだけ伝えた。

……長女と一緒に風呂に浸かるのは、いつぶりだろう。
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