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白衣を脱いで~北新地の夜に溶け合う三人の蜜
第1章 白衣の私
こうした喧騒の中に、四十名近いスタッフがひしめいている。
ベテランの田村先生(五十代、女性)は調剤鑑査の鬼で、処方箋の微細な記載ミスを見逃さない。
「美香さん、この相互作用、もう一度」
若手の男性薬剤師・佐藤は病棟担当を好み、医師との会話を楽しむタイプで、香澄に「この症例どう思う?」と頻繁に声をかける。パートの調剤助手たちは、朝の外来処方箋が集中する時間帯に、黙々とヒートシールを溶着する。 そして、私たちの頂点にいるのが薬剤部長だ。
部長は四十代半ば。冷静で、声を荒げることがほとんどない。
「高〇先生(美香)、この相互作用の報告、文献もう一度」
「はい」 それだけの言葉なのに、私の胸の奥が微かに熱を帯びる。 彼の指示は常に正確で、無駄がない。部下を追い詰めるような厳しさの中に、どこか「完璧を求めているのは、君たちを守るためだ」という匂いがする。私は、その匂いに気づいてしまった。
最初の亀裂は、半年前の夜勤のときだった。
救急外来から緊急の処方箋が立て続けに入り、調剤室は戦場と化していた。私は抗生物質の溶解を急ぎ、香澄が隣で輸液の配合変化を確認している。無菌調製室の扉が何度も開閉され、防護服の擦れる音が響く。
「高〇先生、この患者さん、腎機能が急に落ちてます。減量必要じゃないですか」
香澄の声が少し上ずっていた。
「そうね。部長に」
私が内線を取ろうとしたとき、部長がすでに背後に立っていた。
「見てる。減量して、医師に連絡しておく。香澄ちゃん、調製に戻って」
短い指示。しかしそのとき、部長の手が私の肩に軽く触れた。
「無理するな」
それだけだった。 なのに、触れた指の感触が白衣の下でいつまでも残った。
ベテランの田村先生(五十代、女性)は調剤鑑査の鬼で、処方箋の微細な記載ミスを見逃さない。
「美香さん、この相互作用、もう一度」
若手の男性薬剤師・佐藤は病棟担当を好み、医師との会話を楽しむタイプで、香澄に「この症例どう思う?」と頻繁に声をかける。パートの調剤助手たちは、朝の外来処方箋が集中する時間帯に、黙々とヒートシールを溶着する。 そして、私たちの頂点にいるのが薬剤部長だ。
部長は四十代半ば。冷静で、声を荒げることがほとんどない。
「高〇先生(美香)、この相互作用の報告、文献もう一度」
「はい」 それだけの言葉なのに、私の胸の奥が微かに熱を帯びる。 彼の指示は常に正確で、無駄がない。部下を追い詰めるような厳しさの中に、どこか「完璧を求めているのは、君たちを守るためだ」という匂いがする。私は、その匂いに気づいてしまった。
最初の亀裂は、半年前の夜勤のときだった。
救急外来から緊急の処方箋が立て続けに入り、調剤室は戦場と化していた。私は抗生物質の溶解を急ぎ、香澄が隣で輸液の配合変化を確認している。無菌調製室の扉が何度も開閉され、防護服の擦れる音が響く。
「高〇先生、この患者さん、腎機能が急に落ちてます。減量必要じゃないですか」
香澄の声が少し上ずっていた。
「そうね。部長に」
私が内線を取ろうとしたとき、部長がすでに背後に立っていた。
「見てる。減量して、医師に連絡しておく。香澄ちゃん、調製に戻って」
短い指示。しかしそのとき、部長の手が私の肩に軽く触れた。
「無理するな」
それだけだった。 なのに、触れた指の感触が白衣の下でいつまでも残った。

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