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白衣を脱いで~北新地の夜に溶け合う三人の蜜
第1章 白衣の私
北新地の夜に滴る熟桃の蜜は、突然に熟れたわけではなかった。 あの日の甘い夜は、長い月日をかけて、白衣の下で静かに、しかし確実に発酵していた。

私の名前は美香。某総合病院の薬剤部に勤める薬剤師。

朝八時、地下一階の調剤室に足を踏み入れると、すでに空気が動いている。自動分包機の低い唸り、処方箋プリンターが吐き出す紙の音、冷蔵庫の扉が開閉されるたびの冷たい息。そして、スタッフたちの声。

「美香先輩、今日の抗がん剤、二件増えました」

香澄が、まだ少し寝癖の残る黒髪を耳にかけながら近づいてくる。

「わかった。病棟回診の前に終わらせる。混合の確認、お願い」

「はい」

端的で、無駄がない。私たちはこの場所で、そうあるべきだと思っている。

薬剤部の一日は、調剤・製剤業務から始まる。 外来・入院患者の処方箋が次々と流れ込み、内服薬・外用薬・注射薬を量や飲み合わせを厳密に確認しながら準備する。相互作用チェックを怠れば、患者の命に直結する。

無菌調製室では、抗がん剤や高カロリー輸液をクリーンルームの中で、防護服に身を包んで混合する。私はしばしばそこに入り、香澄と一緒にバイアルを静かに扱いながら、点滴の配合変化を二度三度と確かめる。市販されていない特別な院内製剤が必要なときも、私たちは調剤台の奥で、秤量と溶解を繰り返す。

病棟業務も並行する。

午前中、私は病棟に上がり、入院患者の持参薬を確認し、服薬状況を聞き取り、副作用の兆候がないかを観察する。腎機能や肝機能の検査値を見て、医師に投与量の変更を提案することもある。

「この患者さん、クレアチニンが上がってます。減量を検討していただけますか」
——その一言が、チーム医療の中で私の存在を示す。薬剤師外来では、手術前の患者に服薬中止の説明をし、不安な目を見つめて丁寧に言葉を重ねる。

医薬品管理の現場は、さらに厳格です。 麻薬・向精神薬・毒薬・血液製剤は、鍵のかかった専用棚で二重三重に管理される。在庫の過不足を確認し、品質を保ち、DI業務として最新の添付文書や安全性情報を院内に発信する。感染制御チームや緩和ケア、栄養サポート(NST)のカンファレンスにも顔を出す。治験管理の書類を整える夜もあった。

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