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美香・透明な婚姻
第3章 灯篭流しの夜に濡れる
二日目の朝を迎えた。

今日は、この土地に古くから続く灯篭流しと盆踊りの日だった。幸いにも天候には恵まれ、予定通り日没とともに灯篭が川面を流され、その後に漁港の広場で盆踊りが執り行われることになっていた。私たちは、前から準備していた手製の灯篭に細やかな飾り付けを施し、その出番が来るまで床の間へと大切に飾っておくことにした。

昼食を済ませると、夜の祭りが始まるまでの時間を使って、私と秀隆くんは連れ立って親戚の家々を回ることにした。彼の家がある田舎特有のしきたりというか、この辺りは近くに身内が多く集まっている。

四軒ある親戚の家も、車を走らせればすべて回っても三十分とかからない距離だった。私はいつも親戚周りのためのお土産を用意してきているので、それを手にして一軒ずつ挨拶へと向かう。

その親戚の中に、私たちが「よし兄」と慕う男がいる。

この土地では、年上の身内に対して名前の後ろに「兄」や「姉」をつけて呼ぶのが習わしだった。よし兄の家は、彼らの家から歩いて五分ほどのところにある。彼は私の三歳上で、今年四十八歳になる男だった。

幼い頃は、近くの川や海で毎日のように一緒に泥にまみれて遊んだものだという。よし兄は一度、東京に出て、東京でフリーランスのカメラマンとして働いていたが、「やっぱり東京より田舎の方がいい」と、いつの間にかこの地元へと戻ってきていた。今はここでカメラマンとして生計を立てているという。

プロとしての腕は確かなようで、Web制作会社や広告代理店から業務委託を受け、十分に一人で暮らしていけるだけの収入を得ているとのことだった。その上、持ち家のある独身貴族だから、金銭的な不自由とは無縁のようだった。

普段は市街地にある事務所兼自宅で一年の大半を過ごしているが、お盆の時期になるとこの地元の実家へ戻り、何をするでもなく自由気ままに時間を費やしている。ちなみに、この田舎では昼間に玄関の鍵をかける習慣がない。観光客も滅多に来ないせいか、いまだに夜間でさえ無施錠のまま眠る家もあるくらいだ。それでも、泥棒に入られたとか、危ない目に遭ったなどという不穏な噂は一度も聞いたことがなかった。
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