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美香・透明な婚姻
第3章 灯篭流しの夜に濡れる
「こんにちは。よし兄、いる?」

玄関の扉を開け、間口から声をかけると、奥からタンクトップにサーフパンツという出立ちでよし兄が姿を現した。陽に焼けて浅黒い肌、無造作に生やした短い顎髭、そして長く伸ばした髪を後ろで一つに束ねている。そんな彼のことを、私は心の中でいつも「自由人」と呼んでいた。

「おう、秀隆。あれ?美香さんやないの。今年も帰ってきたんや。ここで立ち話もなんだから、冷たいお茶でも飲みまいよ。それかビールにする?」

その時、よし兄の視線が、私の頭の先から太腿のラインまでを舐め回すように動いたのを、私は感じた。

「よし兄、お構いなく。それにしても、よし兄って本当にずっと変わらないわね。もうすぐアラフィフだなんて信じられへんわ」

「いやいや、元気と若作りだけが取り柄やけん。それで、美香さん、今日の予定は?」

「灯籠流しの後、盆踊りにでも行こうかなって思って」

「あ、俺も行くよ。じゃあ後でまた会えるな。ところで、いつまでこっちにおるんが?」

「あと四日くらいかしら」

「海には泳ぎに行かんの?」

「明日、天気が良ければ子供たちを連れて行こうって言っとんよ」

その言葉を聞いて、よし兄の頭には、去年私が身にまとっていた鮮烈なゼブラ柄のビキニの姿が鮮明に蘇っているようだった。

「美香さん、あんまり長いことこっちにもおらんし、久々に盆踊りの後でスナックにでも飲みに行かんか? 秀隆もどうや。一緒にいかんか?」

「いいけど、よし兄は義姉さんと二人きりの方がいいんじゃないの?」

秀隆くんがからかうように言うと、よし兄は少し照れたように笑った。

「美香さんと二人きりだったら、緊張してまうやろう。だからお前も誘っとんだろう。美香さん、どうかい?」

「私は構わんよ。秀隆くんも、もちろん来てくれるよね?」

「ああ、じゃあ、みんなで行きましょうか」

そう言葉を交わし、私たちはよし兄の家を後にした。私は知っていた。よし兄が私に密かな恋心を抱いていることを。というよりも、刺激の乏しいこの閉鎖的な田舎町において、都会の香りをまとって時折現れる私の姿は、男たちの性的な好奇心をたまらなく駆り立てることを。
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