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開発された女教師〜純愛の果ての真の快楽〜
第2章 静かなる予兆
「俺もいないんだよね」

​秋はそう言って、ハイボールのグラスを傾けながら、どこか遠くを見るように小さく笑った。

​彼氏がいないと告げた七海に対して、その一言だけを静かに置いた。

ここから「じゃあ、どれくらいフリーなの?」とか「どんなタイプが好きなの?」といった、よくある恋愛の追及が始まるのだろうと、七海は無意識に身を構えていた。

大学時代のあの半年間の元元の彼の話になれば、どう答えるべきか、お酒の回った頭で必死にシミュレーションすらしていた。

​しかし、秋はそれ以上、七海の領域に踏み込んでこなかった。

​「あ、この生ハム、すごく美味しいよ。七海、ビールに合うんじゃない?」

​何事もなかったかのように、秋はまた元の穏やかな、けれど崩したタメ口のまま、トングで生ハムを七海の小皿へと取り分けた。

そこからはまた、映画のトピックスや、明日からの研修のレポートの進捗といった、他愛のない世間話が滑らかに再開されていく。

​「え、あ……うん。ありがとう……」

​取り分けてくれた生ハムを口に運びながら、七海は完全に拍子抜けしていた。

​あんなに確信犯的な低い声で「彼氏いるの?」と真っ直ぐに聞いてきて、自分の心臓をあれほど激しく狂わせたというのに。

まるで、最初から深い意味なんてなかったかのように、あっさりとその話題を切り上げてしまう。

​サバサバ系教員としてのプライドは保たれたはずなのに、胸の奥には、なんとも言えない焦れったいモヤモヤが居座っていた。

​(なんなのよ、一体……)

​元彼の話を聞いてこないのは、自分に興味がないからなのか、それともただの計算なのか。

思わせぶりな態度を取っておきながら、一歩引いて見せるその絶妙な距離の取り方が、七海の心をさらに強く揺さぶる。

​追及されない安堵感よりも、「もっと私のことを知ってほしい」という、自覚したばかりの恋心がじりじりとあぶり出されていく。

​目の前で微笑む秋の、その涼しげな瞳の奥にある本心が分からない。

あっさりと引かれたからこそ、七海は本庄秋という男の存在が、余計に、狂おしいほどに気になって仕方がなくなっていた。
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