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想いあふれて
第5章 耳元でささやく声、心溶かす響き
紫苑は小さなステージの中央に置かれた腰高のスツールに座ってギターを構えた。
客席を見渡し、りつかの姿を見つけると、無邪気なほほえみを見せた。不意打ちの親愛を込めた仕草に、心臓が跳ねる。
ギターのイントロに乗せて、拍手が鳴り響く。
紫苑の歌声が、会場の空気を染め上げる。その声の響きはやさしく、まるで羽毛布のように暖かくりつかを包んだ。
静かな春の雨が葉を濡らすような優しい湿度を、紫苑の声は持っている。悲しみを呼び起こすだけでなはい、懐かしさ、温かさ、それに、急に時の流れがゆったりとしてしまうような穏やかさがある。
りつかの胸にこびりついた、今となっては何の色かも判別できないような黒ずんだシミ───それは時々思考の表面に現れてりつかを重苦しくさせる不快な思い、突然蘇ってみぞおちをチクチク挿してくる記憶───そんな、言葉にできず吐き出せないまま心に根を張って居ついた感情を、紫苑の歌声が、体内に流れ込んで洗い流し、通り抜けていく。
言葉にならない想いが、体を揺さぶられて外に流れ出る。
まるで、心の奥にしまい込んで鳴らさずにいた弦に、紫苑がそっとふれてきて、響かせて、りつか自身に聞かせてくれているかのようだ。ちょうど、「君が今感じているのは、こうした思いだよ」とでも、言うかのように。
りつかの奥から鳴り響く音に自らが耳を傾ければ、それははとても悲しげなのに、とても激しい。
りつかはさらに紫苑の歌に体を浸すように、ゆっくり目を閉じた。
気が付くと、紫苑が、りつかの体に触れていた。
客席を見渡し、りつかの姿を見つけると、無邪気なほほえみを見せた。不意打ちの親愛を込めた仕草に、心臓が跳ねる。
ギターのイントロに乗せて、拍手が鳴り響く。
紫苑の歌声が、会場の空気を染め上げる。その声の響きはやさしく、まるで羽毛布のように暖かくりつかを包んだ。
静かな春の雨が葉を濡らすような優しい湿度を、紫苑の声は持っている。悲しみを呼び起こすだけでなはい、懐かしさ、温かさ、それに、急に時の流れがゆったりとしてしまうような穏やかさがある。
りつかの胸にこびりついた、今となっては何の色かも判別できないような黒ずんだシミ───それは時々思考の表面に現れてりつかを重苦しくさせる不快な思い、突然蘇ってみぞおちをチクチク挿してくる記憶───そんな、言葉にできず吐き出せないまま心に根を張って居ついた感情を、紫苑の歌声が、体内に流れ込んで洗い流し、通り抜けていく。
言葉にならない想いが、体を揺さぶられて外に流れ出る。
まるで、心の奥にしまい込んで鳴らさずにいた弦に、紫苑がそっとふれてきて、響かせて、りつか自身に聞かせてくれているかのようだ。ちょうど、「君が今感じているのは、こうした思いだよ」とでも、言うかのように。
りつかの奥から鳴り響く音に自らが耳を傾ければ、それははとても悲しげなのに、とても激しい。
りつかはさらに紫苑の歌に体を浸すように、ゆっくり目を閉じた。
気が付くと、紫苑が、りつかの体に触れていた。

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