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想いあふれて
第1章 律花
りつかはそのことをよく分かっていて、
期待しても無駄だということも知っている。


啓がその言葉をやすやす口にしないことには、
特別な理由がある。

そう、りつかは信じている。

こんなにも甘い言葉をささやく啓が、
「愛してる」
その言葉だけを言わないのは、
言うべき時にとってあるからだ───と。




先ほど、
梅雨の激しい雨に打たれながら二人で訪れた、
夜の植物園を思い出す。

熱帯雨林のようなドーム型の温室で、
啓と見た「律花」という花が、
なぜかまぶたの裏にちらついた。


原色の光彩をおりなす熱帯の植物たちの間で、
ライトアップする照明を避けるかのように、
ひっそりと頭を下げている、
不思議な花だった。


閉じた肉厚の花びらからは、
雫が垂れ落ちるほどにたっぷりと蜜をたたえ、
うなだれたような格好で咲いているのだ。
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