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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第26章 父の日の前夜 ~夢の余韻(start-2day)~ 彩香編①
大阪で再び同棲を始めてから、さらに3ヶ月が経った。

彩香の心は、予想外の方向へ変化していった。

最初は「怖いのに甘えたい」という葛藤だった。

健治さんの重い保護欲と独占欲に息苦しさを感じながらも、
彼の逞しい腕の中にいる安心感にすがっていた。

しかし、日を追うごとにその想いは強くなっていった。

朝、健治さんがリモートワークでノートパソコンに向かう横でコーヒーを淹れるとき。
夜、ベッドで彩香の細い体を厚い胸板に抱き寄せ、
低い声で「今日も可愛かったぞ」と囁くとき。

外出時に「他の男と話すな」と少し意地悪く耳元で言うときでさえ、
彩香の胸は熱くなった。

(……もう、離れたくない)

ファザコンで恋愛経験のなかった彩香にとって、健治さんはまさに
「理想の父親以上、恋人以上」の存在だった。

40半ば過ぎの渋い容貌、深く刻まれた皺、鋭い眼差し、男らしいがっしりとした体躯。


すべてが彩香を包み込み、守り、独占しようとする。


怖かったはずの独占欲が、今は愛の証のように感じられるようになっていた。

「健治さん、私……大阪の仕事、辞めます」

ある夜、彩香は健治さんの胸に顔を埋めたまま、ぽつりと告げた。

健治さんの大きな手が、彩香の背中をゆっくりと撫でた。

「本当にいいのか? お前がせっかく慣れてきた仕事だぞ」

「うん。本当です。……神奈川に戻って、健治さんとちゃんと一緒に暮らしたい。
毎日、朝も夜も、健治さんの傍にいたいんです」

彩香の声は少し震えていたが、目は真剣だった。

黒縁メガネの奥で、大きな瞳が潤んでいる。

健治は彩香を抱きしめる腕に力を込めた。


口ひげの下で、満足げな笑みが浮かんだ。

「わかった。俺もお前を離したくない。神奈川のマンションに戻ろう。
お前が望むままに、全部面倒見てやる」




2週間後、彩香は大阪の会社に退職を申し出た。
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