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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第26章 父の日の前夜 ~夢の余韻(start-2day)~ 彩香編①
「俺も悪かった。……前妻の時と同じ過ちを繰り返すんじゃないかって、
自分でもわかってた。でも彩香、お前は違う。あの頃の俺とは違うと思いたかった。
お前が恋愛未経験で、一途で、俺にだけ寄りかかってくれるところが
……どうしようもなく愛しくて、離したくなくなった」

健治さんの声が少し低くなる。

「貴にも、いつか会わせたかった。あいつ、今年大学1年生になったばかりだ。
お前みたいな優しい女性が母親だったら……と思ったこともある」

彩香の目から涙がこぼれた。

健治さんの胸に顔を埋めると、懐かしい匂いと、厚みのある胸板の感触が蘇った。

週2回の水泳で引き締まった体、逞しい腕。
守られている安心感と、飲み込まれそうな恐怖が同時に押し寄せる。

「帰って……一緒に神奈川に戻ろう。彩香、俺はお前を傷つけたくない。
ただ、傍に置いておきたいだけなんだ」

健治さんの指が彩香の柔らかいヒップの辺りに回り、軽く抱き寄せた。

むっちりとした太ももが彼の脚に触れる。彩香は小さく身を震わせた。

「……怖いんです。健治さんの愛し方が、どんどん強くなって……
私を全部自分のものにしようとしてるみたいで」

「その通りだ。全部俺のものにしたい」

健治さんは正直に言った。鋭い眼差しが、わずかに柔らかくなる。

「でも、お前が嫌がることはしない。
……今日は泊まらせてくれ。話だけだ。朝になったら、決めていい」


彩香は迷った。


逃げてきたのに、心のどこかで健治さんを求めていた自分を、否定できなかった。

父親のいなかった幼少期から、40代以上の男性にどうしようもなく惹かれてしまう体質。



健治さんはその究極だった。



結局、彩香は小さく頷いた。その夜、狭いベッドで健治は彩香を抱きしめたまま眠った。

逞しい腕が彩香の細い体を包み込み、厚い胸板に彼女の頰が押しつけられる。

健治の寝息は穏やかだったが、時折「彩香……」と低く呟く声が漏れた。


彩香は目を閉じながら思った。

(逃げても、結局ここにいる……)


大阪の夜は静かだった。

でも、健治さんの体温が、彼女の心を再び神奈川へと引き戻そうとしていた。
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