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キモおじ ~もう一つのエロ本を拾っただけなのに~
第2章 《届いた招待状》
──【2023年 3月】

あの悪夢のような12月の夕暮れから、3ヶ月の月日が流れていた。
季節は冬を越え、柔らかな春の日差しが街を包み込み始めている。

18歳の誕生日の直前、優香は「聡さん」の正体を知り、すべてを放り出して逃げ帰った。
それ以来、優香はあの公園に近づくことを一切やめた。少し遠回りになっても、必ず大通りを通って登下校し、帰宅後は家の鍵とチェーンを厳重にかけて引きこもった。
いつ自分の悪事が親や学校にバレるのか。あの薄毛の小太りなおじさんが、突然家に押しかけてくるのではないか。
最初の1ヶ月は、夜も眠れないほどの恐怖に苛まれていた。少しでも外で物音がすればビクッと肩を震わせ、インターホンが鳴るたびに心臓が止まりそうになった。

しかし、1月が過ぎ、2月が終わっても、何も起きなかった。
親から呼び出されることも、学校で噂になることもない。もちろん、あの男が目の前に現れることもなかった。

(諦めてくれたんだ……)

3月に入り、ようやく優香は心からの安堵の息を吐くことができた。
相手は、どこにでもいるような冴えない中年男だ。女子高校生にちょっかいを出して、バレて逃げられたからといって、わざわざ深追いして自分の人生を棒に振るようなリスクは冒さないだろう。彼だって、自分が異常なことをしているという自覚くらいはあるはずだ。

(よかった。本当に、よかった……)

あれは、受験勉強のストレスが生み出した、一時の気の迷いだったのだ。
匿名の文通。見知らぬ男の液体の匂いを嗅ぎ、顔に塗り、飲み込むという異常な行為。
今思い返せば、自分でも信じられないほど狂っていた。でも、もう終わったことだ。私は無事に逃げ切り、普通の日常を取り戻したのだ。

星嶺女子高等学校の卒業式は、今週末に迫っていた。
優香は無事に系列の星嶺女子大学への内部進学を決めており、残りの高校生活を友人たちと穏やかに過ごしていた。
春からは女子大生になり、新しい出会いもあるだろう。あんなおじさんではなく、同世代の素敵な彼氏を見つけて、本当の恋愛をするんだ。
優香の胸は、希望に満ち溢れていた。
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