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SAKURA(さくら)
第1章 しだれ桜
 13

「…………あ……………」

「あら……起きたの……」

 ふと、目覚めると…

「あ、雨……」

 高層の密閉された窓に…

 細かい雨が、音もなく、打ちつけていた。

「うん、春雨……
 散らしの……雨ね………」

 隣に、弥生さんが…

 優しい目で、俺を見つめている―――

 ふと、時計に目を向ける…

「まだ、早いわ……」

「あ…はい……」

 まだ、春暁の、明けきらぬ…

 午前四時……

「あ、あ…の………」

「え…」

「あ、いや………」

 俺は、あやうく…

 言いかけて――止めた。

「…はい……」
 弥生さんが、俺のスマホを、手渡してくる。

「あ…」
 切ったはずの電源が、入っていた。

「ロック、掛けてないのね…」

「え、あ…」

「ごめん…」

「え…」

「これ、わたしの、アカウント…」

 それは、仕事用ではない、LINEの…

「あ…見て……ないからね………」

「あ、はい……」

 それは、別に、かまわない…

 ただ…

 心が、跳ねていた―――

「ふうぅ…」

 すると…

「あ…」

 近すぎる、甘い香り…

「け、慶太……って………」

「…………」

 顔に触れてくる、毛先が、柔らかい…

「あ、暖かい……ね………」
 
 その目は、静かな、艶のひかり……

「…………」

 昂ぶる、疼き…

「やっぱ、若いって……」

 艶やかな、唇が、囁く…

「………っ」

「なんか、嬉しい………」

 それは、弥生さんの…

 誰にも気づかれない、内なる熱さ……

 いや…

 俺だけが…

 知ってしまった、熱さ―――

 そして…

 弥生さんの心が…

 もう、元には、戻らない気がした―――



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