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SAKURA(さくら)
第1章 しだれ桜
 9

「あ…や、弥生さんは………」

 どう、言い表してよいのか―――

 俺から見たら…

『散る』どころか、昨夜の満開のしだれ桜の様に…

 優雅で…

 煌びやかで…

 そして、この控え目なお淑やかさ…

 でも言葉にしたら…

 きっと、陳腐な羅列になってしまうから…

「や、弥生さんは…………」

 何も…

 言葉に、できない―――

「………」

 絡まる指先に、力が籠り…
 
 俺は、言葉の重さに、圧されつつあった。

 何か、気が利いた言葉は………

『慶太はさぁ、口ベタなんだからぁ…』

『もうちょい、褒めてよぉ…』

 ふいに、美卯が浮かんできた…

 そして、イヤな、騒めきと…

「…………」

「…………」

 無言の、重さが―――


「何か、お代わりお持ちしましょうか…」

「………っ」

 その時、不意に、スタッフのそんな声が…

「……えっ、あ、あぁ…そ、そうね………」

 二人の重さを、外してくれた。

「あ…」

 絡まる指先も、軽くなり…

 満席に近い店内の人いきれの喧騒が、耳に騒つき…

「そ、そうね、辛口の白をいだこうかしら…」

 問うてくる、弥生さんの目…

「あ、お、同じ…で………」

 再び、実感する、絡まる指の感覚と…

 触れている、湿りの感触…

 近すぎる、吐息……

 そして…

 巡る、美卯の声による…

 騒めく、罪悪感―――

「………」
 俺は、ふと、テーブルに置いてあるスマホに目を向けた。

「……み、美卯…さん……は?」

 それは、弥生さんの…

 俺に対する、揺らぎの言葉………

「あ…何も、LINEも、ないんで………」

「じゃ…寝ちゃって……る…のかしら……」

 いや…

 しだれる、揺らぎ……

「………っ」
 
 再び、絡まる指に力が入り…

 濡れた目を向け…

 ゆっくりと導き、さかのぼらせてくる。

「ねぇ……」

「………」

「ね……ほ、ほつれは…ここまで…なの……」

「………」

 逸らさずに、見つめ…

「……っ」

 鼓動が、跳ね…

 俺は、指先を…

「………ん…」

 弥生さんの左脚が、小さく震え…

 
 外さずに、越えた―――
 

 
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