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蜜会…五月雨
第4章 五月雨(さみだれ)
 6

「今日は…そんなには遅くならないから…」
 
 夫は、朝食のコーヒーを飲みながら、そう言ってきた。

「はい……
 でも…病院には行ってきますね…」

「あ…うん、そうか…毎日…すまないな…」

 夫のメガネの奥が、冷たく光る―――

「いえ…お義母様も…寂しいかなって……」

「………そうだ……な………」

 夫の唇が、歪む……

「それに、あと一週間だから……」

「あ…そう……だな………」

 微かに、声音が、震えたみたい…

「じゃぁ…」

 夫は、コーヒーカップを置き、立ち上がり、椅子を引く…

「いってらっしゃい……」

 玄関で見送ると…

 昨夜からの雨は止み、灰色の雲が、低く、ゆっくりと、流れていた。

「雨、大丈夫かしら…傘、お持ちになる?」

「いいや……邪魔になるから……」

「……………」

「もし、強く降ってきたら………」

 わたしの目をジッと見つめ…

「……………」

「その時は………電話……するよ………」

 わずかに、唇を歪ませる…

「あ……はい………」

 それは、夫の…

「…………………」

 それとも、わたしへの…

「………………」

 それでも、わたしは…

 クローゼットを開け……

 昨夜と同じ、瓶を手に取り…

 今夜も…

 また…
 
 彼と、逢うの―――


 夫を見送る、わたしの後ろでは…

 スマホが、知らせに、震えていた。

 

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