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蜜会…五月雨
第4章 五月雨(さみだれ)
 7

「あ、あのぉ、ほら…あれだ……」

「え……」

 彼、颯太は、ワイシャツのボタンを掛けながら…

「あ、ほら、その………」

 サイドテーブル上のカードキーに、チラと目を向け…

「いつも…大丈夫なのかなって…さ………」

 シーツにくるまっているわたしを見つめ、訊いてきた。

「え、あ、そんなこと……」

「い、いや、そんなことってさぁ……」

「うん、大丈夫よ……」

「で、でも、毎日、あ、毎回さぁ……」

「ううん、平気よ…
 いちおう、夫の会社は景気いいし、それに、経費で落とせるから……」

「あ、いや、そうはいってもさぁ…
 さすがに、こう毎日じゃあ…………」

「うん、ありがとう…でも、大丈夫だから…
 それに、わたしが逢いたくて、こうして誘ってるんだし……」

「うん、それは、いや、オレも…
 毎日でも、美春に逢いたいからさぁ……」

「うん、嬉しい……
 でも…颯太の方こそ、大丈夫なの?」

「あぁ、それは、大丈夫だけど………」

「え………」

 彼は、ネクタイを、器用に絞めながら…

「ただ、昨日、あれから会社に戻って見積り作ってたらさぁ…」

「…………」

「会社の女子が、鼻をヒクヒクさせながら…」

「…………」

「オンナの匂いしますよ…って、からかわれちゃってさぁ……」

「あら………」

 彼は、満面の笑みを浮かべながら、そう言ってきた。

「ほら、最近、美春のさぁ……」

「……………」

「少しだけ…強い……のかなぁってさ……」

 ネクタイを絞め、上着を着ながら、少し、鼻をヒクヒクさせてくる…

「……そう…かしら……」

「ま、その子も、軽い冗談で言ってきてるんだけどね…」

「うん……あ、でもね………」

「ん……」

「来週は、少しだけ……逢えないかも……」

「え………」

 わたしは、ベッドから、彼を見上げ……

「うん、来週ね………」

「……………」

「義母がね……」

「うん……」

「義母がね……退院するの…………」

「………………」


 ブー、ブー、ブー………


 その時…

「あ…………」

 バッグの中で、スマホが震えてきた。


 そして、ふと、窓を見ると……

「あら…また、雨………」


 小さな雨粒が、細かく、しっとりと…

 窓の外を濡らしていた―――

 
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