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蜜会…五月雨
第4章 五月雨(さみだれ)
 3

 バタン―――

 閑かな住宅街に、タクシーのドアの閉まる音がやけに響いた。

「あ……」

 玄関には灯りが…

 やはり…

 夫は、帰っていた。

「………あ、遅く……なりました………」

「…ん、いいんだ…私も…さっきだから…」

 リビングから見てくる夫の目が…

 メガネの奥から、冷たく、ジッと見つめてくる。

「ちょっと……お友達と………」

「あ、うん……そうか………」

「お、お食事は……」

「……済ませてきたよ………」

「………あ、お、お義母さま…が……」

「ん…………」

「あ、あと、二週間で…退院ですって…」

「………らしいな…………」

「……あ………は、はい…………」

 空気が、シンと張り詰める…

 そして、話ながらも冷たい視線が…

 ゆっくりと、上下してくる。

「ま、毎日……通ってくれてるみたいだな……」

「え…あ、は、はい、それは…はい……」

「助かるよ………」

「あ、い、いいえ…………」

 当然ですからとは、言えなかった。

 カタカタカタ―――
 と、リビングが、小さく震えた…

「珍しいな、こんな時間にトラックなんて…」

「あ…そ、そう、し、シャワーを……」

 ふと、緊張が緩み…

「あぁ、先に…寝てるわ……」

 メガネの奥が、歪に光った。


 バタン―――

 浴室のドアを閉め…
 鏡を見る。

 そして、ふと、リビングテーブル上の残像が、思い浮かび…
 鼓動が高鳴り…
 背中に冷たいモノが、スーっと落ちていく。

 確か、あれって…

 ガチャ―――

「あっ…」

 夫がドアを開くなり、後ろから…
 抱きしめてきたのだ。

 逃げる間もなかった…

「すぅぅ……」

 そして、息を吸い…

「…なんか……キツいなぁ………」

 そう呟き、鼻先をうなじに寄せ…

「あっ、やっ………」

 腰に触れてきた。

「ふぅん…」

 まさぐり…

「そうか……」

 指先が、迷いなく、位置をなぞる。

「今夜は……そうか………」

「あ……………」

「………………」

 指先が、なぞってくる―――




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