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闇夜を彩るアラベスク
第9章 いて座の男
彼女は上川が声をかけてきたのは新手のナンパだとでも思ったのか、上川の事を無視し始めた。
だが、10キロのダンベルを持ち上げる事が出来ずに次第に肘が限界に来たのか少しずつ体の上に落とし始める。
親切に声を掛けてあげたのに無視されたことで「どうぞ勝手に苦しんでください」と上川は自分でも心の狭い男だと思ったが、そっちがその気なら手伝ってやるもんかと傍観することにした。
「くっ!ああぁ~!」
ダンベルは少しずつ下がり始め、やがて彼女の胸に食い込み始める。
豊満なおっぱいにダンベルのバーが食い込むのを見て、これはヤバいと、上川は仕方なく補助をしてダンベルを持ち上げてあげた。
「危なかったね。たかが10キロと侮っては命取りになるから気を付けた方がいいぜ」
ダンベルを元の位置に戻してから「余計なことをしないでよ」と、逆ギレされても厄介なので、彼女に背を向けて立ち去ろうとした。
「あ、あの…」
背後から彼女のなんとも耳に心地よい声に呼び止められて「何か?」と上川は足を止めてクルリと振り返った。
「あ…助けていただいてすいません…」
恥じらいからか、それとも先ほどまで力をこめていたからか、彼女は顔を真っ赤に上気させてベンチから立ち上がると、上川にペコリと頭を下げた。
「スーパーで10キロの米袋を買って抱き抱えられるから、10キロぐらいならベンチプレス出来ると思ったの」
「普通はそう思うよね。でも、抱き抱えるのと腕の力だけでプレスするのでは重さの感覚が違うからね」
「そうなのね…ねえ、もし、よろしければこれからもいろいろ教えてほしいわ」
「もちろん。では、お近づきの印にこの後お茶でもしませんか?」
「そうねえ…じゃあ、シャワーを済ませますから玄関ロビーでお待ちいただけます?」
思いもよらず、美人でスタイルの良い彼女との出会いに上川は心を踊らせた。

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