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恋は静かに、長く、深く
第10章 浩平 星になれたら
もう三十年も前のことなのに、
あのとき背中にぴったりと張り付いた優香里の体温を、
僕は今でもはっきりと覚えている。



あのとき気持ちを伝えたかったけど、
今はそのときじゃないと思って、
僕はぐっとこみ上げる思いを堪えた。


そして勉強して勉強して、
奨学金で大学に通い、
大学院に進んだ。


僕の学費を貯金してくれていた母さんは、
その貯金で歯列矯正をしろと勧めてくれた。

勉強しながら矯正歯科に通ううち、
自然と痩せてしまった。

矯正が終わって、
体重も落ちた自分を鏡に映して、
僕は懐かしい思いがした。

そこに、
いつか会った家庭教師が立っている。


あのとき江藤と名乗ったのは、多分僕。
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