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夜空に煌めくアラベスク
第1章 おひつじ座の女
翌日から退屈な日々が始まった。
日頃の習性とは恐ろしいもので、出張で夫がいないにも関わらず、羊子はいつも通り二人分の食事を用意してしまった。
「またやっちゃった…」
出張初日はいつもこうだ。
これで明日も同じものを食さねばならない。
捨てるのももったいないしね…
こうなったらビールでも飲んで酒の肴代わりにおかずをつまむ事にしようと、近所のコンビニへビールを買いに行った。
夫は下戸なので、冷蔵庫にはアイスコーヒーやジュースはあるけど、アルコール類は皆無だったので、これ迄も羊子が呑みたくなったらコンビニへ買い出しに出かけていた。
「おや、珍しい…ご主人のためにビールの買い出しですか?」
コンビニの帰り、エレベーターで顔を合わせたのはお隣の男だった。
彼は建設業ということで、日に焼けて真っ黒な顔をして、笑うと真っ白な歯が印象的だった。
「今お帰りですか?」
「珍しく作業が早く終わったものですから」
軽く会釈を交わし、そのまま我が家の中に入ろうとしたが、
「お食事は済まされましたの?まだなら良ければ、ウチへいらっしゃいません?」
一人の食事は味気ない。
何気なく愛想良く誘ってしまっていた。
「ええ、ありがとうございます!しかし、旦那さんのご迷惑になるでしょうから」
そういって辞退した彼だったが、
「遠慮なさらないで、主人は出張中ですし、ウチは子供もいなくて、一人で寂しいなって思ってたとこなの、どうぞ寄っていってくださいな」
「そうですか、申し訳ないですね…じゃ、お言葉に甘えるとしますか」
思わぬ展開に少々戸惑いながら、彼はこうして家に上がり込んだのだった。

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