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路地裏文化研究会
第2章 ピンクの電話が鳴って
 「あ、あんまり呑めませんけど、いちおう誕生日は過ぎました」
 「ああそう、よかった。こっちもみんな集まれるから、折角だからあなたの歓迎会でもと思ってるんだけど、付き合ってくれるかな?」
 「あ…はい、すみません、なんだか」
 「いやいや気にしないで。歓迎会があろうがなかろうが、いつも呑んでるんだよ」
 「いえ、ありがとうございます。すみません、お気を遣っていただいて」
 「お酒は何が好きなの?」
 「え? ええと、何でも好きです…」
 「美味しいのを用意しておくね。ふふ、何だかいける口そうだね。少々濃いめでもよさそうだね」
 「あ、そんな…あ、はい、すみません…」
 「こちらこそ悪いね。ただでさえ、おじさんばっかりで、しかも呑み会にまで付き合ってもらえるなんてね。じゃ、よろしくね」
 「はい、よろしくお願いします…」

 電話が切れて、わたしは受話器を置きました。”勉強熱心”なわたしが本の注文をしたものと勘違いしている大家のおばさんにちょっと悪いと思いながら…。わたしは心の中で呟きました。

 ”そうだわ。これも”勉強”よね…おじさんばっかり”…たしか四人…”

 わたしは部屋に帰ると、カーテンをきっちりと閉めました。そして、お気に入りの雑誌を開いて”勉強”に耽ったのでした。掌に残る受話器のボテッとした感触と、用意してくれるという”美味しい濃いめのお酒”に思いを馳せながら…。

 からだが熱くなってきて、わたしもお酒を醸し出し始めました。おじさんたちのような何十年モノに比べたら、深みも味わいもないのでしょうけど…。それでも、今日はいつもより芳醇…かも。だって、指がぬるんと入ってしまって、かき回すたびに素敵な音がしていますもの。お口に合えばうれしい…。

 指がこんなになってしまっては、もうページはめくれません。めくらなくてもいいくらいに、わたしは、わざと音を立てるように指を動かせながら、妄想に酔い痴れていきます。

 『アルコール分はそれほどでもないが、まさに”回春の妙薬”だね。お酒というよりは”甘露”かもしれない。悪くない、悪くないよ…』

 そんな社交辞令を口々に言ってくれそうなおじさんたち…。八本の手でわたしのからだを揉みほぐしながら…。
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