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路地裏文化研究会
第1章 路地裏文化研究会
「ええとね、みんなほんとにいい歳でね。ボクはまだ五十代で最年少。あとは、サラリーマン上がりに、写真屋上がりに、先生上がり。まあ、みんな暇を持て余しているから、路地裏歩きなんて道楽してるってわけ。可愛がってもらうといいよ」
『可愛がる』という言葉にドキッとしてしまいました。この前ここで買った本は、若い女の子が年上の男の人たちに『可愛がられる』告白体の作品だったから。みんなで腰が痛いだの、膝が痛いだの言いながら…。
「はい。…楽しみです」
わたしの声は、ちょっと上ずっていたかもしれません。よりによって”楽しみ”などという言葉を選んでしまったりもして。その理由はわかっています。この数日、わたしは『可愛がられる女の子』にずっと自分を重ねていたから。わたしの好きな設定、わたしの好きな情景…。
研究会は古書店の定休日である水曜日に開くことが多いそうです。わたしは、その曜日に講義を入れてしまっていました。交友関係を疎かにしていたツケで、代返を頼めるような友人もいません。
「学校が終わってから参加させていただいてもよろしいですか? 前期だけなんですけど、講義を入れてしまったので。必修科目ではないのですけど…」
水曜日の講義くらい、どうにでもなるような気がしていました。
「やっぱり学生さんでしたか。勿論ですよ。必修科目じゃなくてもちゃんと履修してください。学生さんの本分は学業ですからね」
そう言われて、はじめて、自分が学生であるという身分を自分から明かしてしまっていたことに気付きました。
「大丈夫ですよ、お嬢さんが来るまで研究会は始まりませんから」
中村さんが冗談めかして笑うと、わたしもつられて笑ってしまいました。
「『学校が終わってからでもいいですか?』なんて言われちゃうと、たまらないなぁ…」
「えっ、どうしてですか?」
「だって、そんなセリフ、学生さんじゃなかったら言えないじゃない?」
中村さんは、わざとらしいくらいに感心してみせました。
『可愛がる』という言葉にドキッとしてしまいました。この前ここで買った本は、若い女の子が年上の男の人たちに『可愛がられる』告白体の作品だったから。みんなで腰が痛いだの、膝が痛いだの言いながら…。
「はい。…楽しみです」
わたしの声は、ちょっと上ずっていたかもしれません。よりによって”楽しみ”などという言葉を選んでしまったりもして。その理由はわかっています。この数日、わたしは『可愛がられる女の子』にずっと自分を重ねていたから。わたしの好きな設定、わたしの好きな情景…。
研究会は古書店の定休日である水曜日に開くことが多いそうです。わたしは、その曜日に講義を入れてしまっていました。交友関係を疎かにしていたツケで、代返を頼めるような友人もいません。
「学校が終わってから参加させていただいてもよろしいですか? 前期だけなんですけど、講義を入れてしまったので。必修科目ではないのですけど…」
水曜日の講義くらい、どうにでもなるような気がしていました。
「やっぱり学生さんでしたか。勿論ですよ。必修科目じゃなくてもちゃんと履修してください。学生さんの本分は学業ですからね」
そう言われて、はじめて、自分が学生であるという身分を自分から明かしてしまっていたことに気付きました。
「大丈夫ですよ、お嬢さんが来るまで研究会は始まりませんから」
中村さんが冗談めかして笑うと、わたしもつられて笑ってしまいました。
「『学校が終わってからでもいいですか?』なんて言われちゃうと、たまらないなぁ…」
「えっ、どうしてですか?」
「だって、そんなセリフ、学生さんじゃなかったら言えないじゃない?」
中村さんは、わざとらしいくらいに感心してみせました。

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