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路地裏文化研究会
第10章 ブルーフィルム
 「じゃ、始めます」

 吉川さんが缶からフィルムを取り出して映写機にセットしました。電灯が消され円盤がくるくると回り始めます。スクリーンに白黒の映像が映し出されました。

 「青じゃないんですね」
 「そうだよ。それなのに『ブルーフィルム』というのは諸説あるけど…」

 村井さんが説明してくれようとします。

 「まあまあ、先生、講釈はあとで」
 「それもそうだね」

 皆さん、スクリーンを見詰めています。草が生い茂った何気ない風景が映っています。ちょうどわたしの田舎を流れている川のそばのような景色です。遠くに土手があって、木がまばらに生えていて。そんな景色が何分か続いています。おじさんたちが息をつめて見詰めている理由がわからなくなってきました。

 「おっ」

 誰かが声を上げました。日傘をさした白いワンピースを着た女の人が歩いています。そして、その後ろを手拭いを頭に垂らしたワイシャツ姿の男の人がついていっています。小さな物置のような建物があって、その中に二人が入って行きます。

 画が切り替わりました。布団が敷かれていて、そこに女の人が目を閉じて寝ています。

 「いいね、これぐらいの女が」
 「年増が好きだものな。ボクは奈津子ちゃんぐらいの子がいいけどね」
 「おっと、失礼。訂正するよ」
 「優等生を気取ってやがる。ねえ、奈津子ちゃん」

 とりあえずわたしなりに気付いたことを言えばいいのでしょうか。

 「このお部屋、さっきの掘立小屋の中じゃありませんよね?」

 一瞬、おじさんたちが静かになってしまいました。

 「ははは。奈津子ちゃんの言う通りだ」
 「リアリティに欠けるね」
 「まあ、その辺は気にしたこともなかったなぁ」

 スクリーンは顔から足先まで行ったり来たりしながら、ひたすら女の人の寝姿を映しています。そのとき男の人が女の人の隣に寝そべりました。そして、男女の営みを始めました。

 フィルムが終わりました。

 「”青写真”ってこういうフィルムだったんだけど」
 「そういうフィルムだったんですね。昔からあったんですね」
 「まだまだいっぱいあるんだ。吉川さんのコレクションでね」
 「今のは中村くんが手に入れたものじゃないか?」
 「まあまあ、研究会の共有財産ですよ。奈津子ちゃんの感想、聞きたいな」
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