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路地裏文化研究会
第10章 ブルーフィルム
 今日の研究会は、とある花街の跡を訪ねる予定です。でも、朝から土砂降りです。とりあえず集合場所の駅まで行きました。おじさんたちも全員来ていましたが、雨は止みません。

 「無理して雨の中を歩くこともなかろう」

 村井さんが言うと、皆さんも賛同して街歩きは中止になりました。

 「せっかく集まったんだから何か考えてよ」

 山田さんが中村さんに言いました。

 「先輩にはかなわないなぁ」

 中村さんが苦笑いしています。

 「じゃあ、ウチで吉川さんの”青写真”でも見ますか?」
 「お、いいね」
 「奈津子さんもいいかな?」
 「はい、いいですよ」

 切符を買い直して、中村さんのお店に向かいました。

 「”青写真”って何ですか?」

 電車に乗って隣のつり革につかまっている中村さんに訊きました。

 「ん? ああ…。後でね…」

 辺りを憚るように小さな声で中村さんが囁きます。電車から降りて中村さんのお店に向かって歩いている途中で中村さんが教えてくれました。

 「さっきは”青写真”って言ったけど、まあ、青い写真…ブルーフィルムっていうやつ。知らない?」
 「すみません。不勉強で…」
 「あはは。”不勉強”はいいなぁ」

 山田さんに笑われてしまいました。
 
 「まあ、一目見ればわかるけどね」
 「そうそう。いっぱい勉強してもらいましょう」

 そんな会話を交わしながら定休日の『文華堂書店』に着きました。皆で階段を上がって部屋に入ります。

 わたしが閉まっているカーテンを開けようとすると、中村さんが

 「あ、奈津子さん、そのままで大丈夫だよ」

と、電灯をつけました。村井さんも勝手を知っているように、卓袱台を広げています。山田さんが映写機を運んできて卓袱台に載せました。壁には白いスクリーンが吊るされます。

 「どれにしようかね」

 吉川さんが銀色をした円盤状の缶を手にしています。

 「これって8ミリカメラ、っていうものですか?」
 「そうそう。知ってた?」
 「子どもの頃、公民館で見たことがあります」
 「ああ、あったね。昔ばなしのちゃちなアニメーションとか」
 「今日はそういうのではないんだけどね」

 おじさんたちが含みのある笑いをしています。
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