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2026 人質交換を託された女 (上巻)
第3章 囚われの身
「や…めッ…てぇ…」と微かな声で男に言葉を出すだけで精一杯だった。ソフトな手の動きを感じて、「ハァ…」と肩の力が抜けてしまう。

その時、トイレの扉がコンコンとノックされた。男は大きな溜息をつき、私は髪の拘束から解放され、安堵の息を漏らしていた。

男は「待ってくれ…」と指示を出し、トイレの扉を開け、出ていった。

助かった、という気持ちが大きかったが、男の手が体に伸びるのは時間の問題だった。

髪を後ろに束ねられ、恐る恐る背中を鏡の方に向けた。髪よりも後ろに施された縄掛けに、言葉をしばらく失った。

「何これ…どうやったら…こんな…」と独り言を話していた。

赤い縄の形は、漢字の『干』の字に似ていた。2本の横に伸びる帯が、後ろに回された二の腕に掛けられていた。体にクルリと回し、それが胸の上下に通され、体を覆っていると分かった。背中の中央から縦に伸びる縄が、後ろに組まされた腕を縛っていると、自身の目で確認できた。後ろに組まされた両腕は、肘をおり畳まれ、平行に組まされていた。それは腕がお尻の方に落ちないよう、吊るされている気がした。
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