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御朱印女と怪談男〜にさつめっ☆〜
第13章 間章:桜の時
【間章:桜の時】

「軽部さん、お疲れ様〜」
「うん、お疲れ」

終業後、職場で簡単な挨拶を交わす。事務服から私服に着替えた私は、その日、いつもと違う方に向かって歩き出した。久しぶりに職場近くのカフェで執筆をしようかな・・・と思ったからだった。

3月も中旬を過ぎ、温かい日が増えてきた。ソメイヨシノの開花宣言がつい先日出されたところだった。

春だなあ・・・

そんな陽気に誘われたのもあって、散歩がてらカフェに寄ろう・・・そう思ったのだった。

あれ?

庁舎のすぐ近くの歩行者信号で信号待ちをしている時、すぐ斜め前でスマホを操作している男性がいた。

加山くん?

それは、うちの部署に2年前に着任した若手の男性だった。係は違うけれども面識はある子だ。色白でちょっと肩幅があり、背も高い。誠実な感じの男の子だった。

その時は、『あれ、電車じゃないんだ・・・』なんて思った感じだったが、どうやら行く方向は同じのようだ。繁華街の方に向かって彼も歩いていた。

さて、今日はどこのカフェに行こうかな・・・。
そんな風に考えながら歩いてて、ふと気づいた。

加山くんの隣・・・背中までの明るいブラウンの髪、オールブラックファッション、ボトムはミニスカート、黒のタイツとショートブーツ姿の女性がいた。よく見えないのだが、腕を組んでいるのかも知れない。ピッタリと寄り添うようにして歩いていた。

ちくっと胸が痛む。

別に、何が悪いわけではない。
彼は独身だし、彼女であろうその女性とも年齢の釣り合いが取れている。

ただ、仕事仲間である男性の、ちょっと生々しいシーンを見てしまって、私の心がざわりと騒いだのだった。なんとなく気まずくなった私は、遠回りになることが分かっていながら、道を左に曲がることにした。

なんだろ・・・なにかな・・・。

最初は大したことない、って思って歩いていたのだけど、胸がつかえたような感じは歩くごとに次第に大きくなっていく。庁舎を出た時は軽やかだった足取りも、なんだか重たく感じてくる。

ああ・・・
あれ、想像以上に、私、こたえているんだ。
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