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イケナイアソビ。
第7章 咎人-出逢い編-

 藤次郎がどうしたものかと窮していると、大きな影が藤次郎をすり抜け、店の主人の前で止まった。


「ほら、金はこれで足りるか?」
 男はそう言うと主人に銭を渡し、少女を解放した。

「払ってくれればそれでいいんだよ。じゃあな、嬢ちゃん」
 主人は、さっきとは打って変わって、少女の頭をひと撫ですると上機嫌で店に戻って行った。

 さて、少女を助けたこの男はいったい誰なのか。藤次郎は眉を潜め、相手の顔をまじまじと見ると、片目に傷を負った背の高い男がいた。


 この男は忘れもしない。藤次郎を抱いた、一目惚れの相手だ。


「あんたはっ……!」
「姿が見えないからどこに行ったのかと思ったが……ほぅ? なかなかいいところがあるじゃねぇか?」
 男は少女と藤次郎を交互に見ると、にやりと笑った。

「これはっ! たまたま……」

 思いがけない二度目の逢瀬に藤次郎の胸が高鳴る。しかしいくら事故だとはいえ、藤次郎は否定しなかった。旗本の若様を傷つけた罪人になっている。

 旗本は上様直属の武士だ。彼らがどういう人間であろうとも傷つけることはすなわち、上様に逆らう逆賊となる。その証拠に、公儀の者であろうこの男は、旗本の若侍を傷つけたということだけでこうして藤次郎を追って来たのだ。恐ろしいことになりかねない。

 藤次郎はどうにか隙を見つけて逃げようと試みるものの、けれど先ほどこの男が助けた少女が藤次郎の袖をしっかり掴んでいる。
 これでは逃げることは愚か、どこにも行けやしない。


「懐かれたな。さすがのお前ももう逃げられまい」
 図星だった。男の言葉に何も言い返せず、藤次郎は口ごもる。


「さて、どうするかな……」
 顎に手を当て、考えているその様も素敵だと、藤次郎は男に見惚れてしまう。

 しかし旗本に喧嘩を売ったことになっている自分は罪人として扱われている。いったいどうなってしまうのか。
 恐くないと言えば嘘になるが、それ以上にこの男の傍にいられるのは嬉しいと思うのはおかしいだろうか。

 藤次郎は複雑な思いを誤魔化すようにして、自分の裾をしっかり掴んで離さない少女を見下ろした。

「この子、腹減ってんだ。助けたんだから責任取れ」
 藤次郎は顎で食事処を差した。
 男は罪人の藤次郎を見やる。
 しかし怒る素振りはまるでない。口元に微笑を浮かべ、小さく頷いた。


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