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イケナイアソビ。
第7章 咎人-出逢い編-
(五)
「さて、これからどうしようか」
公儀に目を付けられていることを考えた藤次郎は、飲んだくれの遠い親戚がいる長屋へ帰ることもできず、路頭に迷ってしまった。
青空にはお天道様が顔を出している。
行く当てもなく橋の上をぶらついていると、どこからか男の怒鳴り声が聞こえてきた。それと同時に、藤次郎の足が何かにぶつかった。
びっくりして見下ろすと、そこにはまだ五歳ほどの赤い着物を着た少女が転んでいるではないか。
「すまなかった、大丈夫か?」
藤次郎が少女を起こすと、怒鳴っていた中年男が血相を変えてやって来た。
「お侍様、助かりました。そいつはコソ泥なんです。さあ、食い物を返しなっ!」
中年男は店の主人らしい。藤次郎がよくよく少女を見れば、紅葉ほどの可愛らしい小さな手には饅頭がひとつ。握りしめられている。
主人は手を伸ばし、饅頭を持っている方の、少女の細い腕を引っ掴んだ。
「ーーっ!」
大人の――しかも力の強い男に腕を強く掴まれた少女の顔が苦痛に歪む。それでも少女はよほど飢えているのか、饅頭を離さない。
そこで藤次郎は少女の身なりを改めて見た。
赤い着物の裾は所々に泥が跳ね、裾が破れている。
飯もどうやら食べさせてもらっていないようだ。絹のような肌は擦り傷や切り傷があった。
母親や父親はどうしたのだろう。周囲を見渡しても姿が見えない。
「ちょっと待てよ。たかが饅頭ひとつじゃねぇか。そんなに怒ることはないだろう?」
少女を見かねた藤次郎は見世の主人に食って掛かる。藤次郎もまた、少女のような過去があった。自分と少女の姿が重なり、居ても立っても居られなくなった藤次郎は主人を止める。
懐を探り、銭を取り出そうとするものの、昨夜のいざこざで財布をどこかに落としてきたらしいことを知った。
「そうはいきやせん。こちとら商売してるんですよ。そこまで言うんでしたら、お侍さんが金を払ってくださるんですかい?」
「それは!」
「だったらこれ以上首を突っ込まないでくだせぇ。さあ、来い!」
腹を空かせている幼子を、店の主人はまるで罪人扱いだ。少女を引きずるようにして連れて行く。
「待ってくれっ。金はすぐに取ってくるから、だから!!」
唇を引き結び、泣き言一つ言わない少女が不憫でならない。藤次郎はなんとかならないかと主人に交渉を図る。

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