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切り裂かれた衣
第2章 衣美と匠~共に過ごす日々~
「ん? どうしたの?」

「いや、衣美の手……なんか、ネイルしてる?」

「え、気づいた?!」

 衣美は驚きつつ、嬉しそうに手を広げて見せた。黒いネイルに、キラキラとしたラメが入っている。

「昨日、友達とやったんだ。どう? 可愛い?」

「う、うん……めっちゃ可愛い」

 匠の声は小さく、視線はネイルからなかなか離れない。衣美はそんな彼を見て、胸がドキドキするのを感じた。

「ふふ、ありがと。意外と細かいとこ見てるんだね」

「そ、そんなことないよ! ただ、目に入っただけで……」

 匠の慌てた様子に、衣美はまた笑った。

(お兄ちゃんって、ほんとに素直だなぁ……ふふっ)


 彼のちょっとした言葉や視線が、衣美の心を温かくした。

 そして、告白から一ヶ月ほど経ったある日、衣美は匠にカフェスペースへ誘われた。いつもより少し緊張した様子で、匠がコーヒーを握りしめながら切り出した。


「えっと、衣美……この週末、時間ある?」

「ん? 週末? うーん、たぶん大丈夫だよ。どうしたの?」

「その……もしよかったら、どっか行かない? 二人で」

 匠の言葉に、衣美は一瞬目を丸くした。すぐに、それが「デート」の誘いだと気づき、頬が熱くなる。

「デート? ちゃんとデートって言ってみて!」
 
 衣美がからかうように言うと、匠は顔を真っ赤にしてうつむいた。

「う……で、デート……です。衣美と、行きたいなって……」

「ふふっ、OK! 行こっ! どこ行く?」

 衣美の明るい声に、匠はほっとしたように笑った。
「えっと、映画とか……どうかな? 衣美、映画好き?」

「うん、大好き! アクション? 恋愛? それともホラー?」

「ホ、ホラーは……ちょっと……」
 匠が苦笑いするのを見て、衣美はまた笑った。二人は映画のジャンルや場所を相談しながら、週末のデートプランを立て始めた。

「な、なんかさ……」

「ん?」

 照れ臭そうに口を開いた匠を衣美はきょとんと見つめた。

「こんな感じで話していると……昔を思い出すね。ほら、衣美が……先生だったころのこと」

「ああ……ふふっ、そうだね」

 衣美が思わず笑うと匠も釣られて笑った。

 そう、あの時も確かにこうして……
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