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切り裂かれた衣
第2章 衣美と匠~共に過ごす日々~
 衣美は文学部の講義棟に向かうキャンパスの並木道を歩きながら、突然告白された昨日のことを思い浮かべてつい口元に笑みが浮かばせていた。春の陽光が木漏れ日となって地面にまだら模様を描き、そよ風が衣美の明るい茶髪を軽く揺らした。

 今日の衣美はカジュアルな白のTシャツにデニムのスカート、スニーカーという軽快なスタイルだ。いつも通りのはずなのに、少し特別に感じていた。

(彼氏か……彼女ってどうしたらいいのかな)

 衣美はかつて家庭教師として匠を教えた半年間の記憶を掘り起こす。四人兄弟の長男で、弟たちから「お兄ちゃん」と呼ばれていた匠。成績優秀で、質問も的確、でもどこかシャイで、照れながら「ありがとう、渡邉さん」と言う姿が印象的だった。あの頃の匠は高校生で、衣美は大学生。年の差もあって、ただの「先生と生徒」だった。それが今、恋人として新しい関係を始めるなんて──

「なんか変な感じ。ふふっ」

 衣美は笑いながら、腕時計で時間を確認する。次の講義まで三十分。いつものように図書館のカフェスペースで時間を潰そうと歩を進めると、ふと前方にサラサラの黒髪が見えた。今日もまた白いシャツにジーパン、背中が少し緊張しているような──

「お兄ちゃん?」

 思わず声をかけた瞬間、匠が振り返った。少し驚いたような表情が、すぐに柔らかい笑顔に変わる。

「渡邉さん! あ、えっと……衣美、さん」

 匠はまだ呼び方に慣れていないのか、照れくさそうに目を泳がせる。衣美はくすっと笑って近づいた。

「衣美でいいよって言ったでしょ。さん付け、なんかよそよそしいし」

「う、うん……衣美。えっと、講義?」

「うん、でもまだ時間あるから、ちょっと休憩しようかなって。お兄ちゃんは?」

「俺も……次の講義まで時間あって。えっと、よかったら、一緒に……?」

 匠の声は最後の方で小さくなり、耳まで赤くなっている。衣美はそんな彼を見て、胸がきゅっと締め付けられるような感覚を覚えた。

「うん、いいよ! 行こっ」

 二人は並んでカフェスペースへ向かった。キャンパスは新緑が鮮やかで、学生たちが芝生で談笑したり、自転車で通り過ぎたりする。衣美は匠の横を歩きながら、彼の少しぎこちない歩き方や、時折ちらっとこちらを見る視線に気づいて、内心で「可愛いな」とつぶやいた。
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