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切り裂かれた衣
第1章 突然の告白

四月──
「あ、あの……渡邉さん!!」
突然声をかけられて、衣美は驚いて振り返った。はじめは誰に声をかけられたのかわからず、白いシャツにジーパン姿の彼が立っていてもきょとんと首を傾げたがサラサラの黒髪に女性のようにも見える愛らしい顔立ちの彼を見て、衣美は「お兄ちゃん?」と喜びの声をあげた。
「あれ、衣美って一人っ子じゃなかった?」
怪訝な顔をする友人に衣美は「違う違う」と手を振る。
「家庭教師のアルバイトしていた時に受け持ってた子。お兄ちゃんって呼んでたんだ。あ、ごめん」
衣美は匠に振り向いて笑みを浮かべた。
「ここにいるということはX大、受かったんだね。おめでとう!!」
衣美は匠に向けて拍手をすると匠は「ありがとうございます」と顔を赤くしながら頭を下げた。
「あの……それで……」
匠は顔を上げるとどこか恥ずかしそうに目を背けた。
「あの……あの……X大に合格できたのは……渡邉さんのおかげです」
「そんな、私はあの頃に少しだけ勉強を教えただけだよ」
衣美は謙遜したが匠は「いえ!」と首を振った。そして、グッと拳を握りしめてからまた深々と頭を下げた。
「俺、ずっとずっと衣美さんのことが忘れられなくて……あんなに優しくて、か、可愛い人に会ったのも初めてで……衣美さんの家庭教師が終わってからも……ずっとずっと渡邉さんの事ばかり考えるようになってて……初めて見た時から可愛いと思っていたんです。あんな可愛い人と……その、また会いたい。そして……こ、恋人になりたい。あの……その……まだ友達とかでもないのに……その……X大に合格できたら、ずっと言いたかったことがあるんです。渡邉衣美さん……好きです!!俺と付き合ってください!!」
食堂にいた学生達がシーンと静まり返った。衣美の目の前に座る友人も唖然と口を開いたまま固まった。衣美もまさかの告白にどうすればいいのかわからないでいた。

