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切り裂かれた衣
第1章 突然の告白
 朝の光がレースのカーテンを透かして、部屋をやわらかく照らしていた。渡邉衣美は鏡の前に立ち、ブラシで軽く髪をとかしながら、今日の予定を頭の中で反復する。大好きな彼との初めてのデート。思い浮かべるだけで胸の鼓動が高鳴り、顔が熱くなるのを感じた。

(こんな感じでいいかな……)

 衣美の洗面台の鏡に写った自分の顔を見つめた。髪は肩までの長さで、少しだけ内巻きにセットされた明るい茶髪。インナーカラーに入れた薄い金色が、光の加減でちらりと見える。その色合いは派手すぎず、けれど地味でもない、ちょうどいいバランスにしていた。ブラウンのアーチ眉、くっきりとした二重の瞳、小ぶりで通った鼻筋。
 
 衣美は彼が可愛いと言ってくれた顔のパーツのひとつひとつを見て頬が赤く染まっていることに気づいた。

 指で頬を撫でながら右目の下にある小さな色素沈着の部分で手を止める。目立つわけではないのに、気になるこの部分。コンシーラーを軽く叩き込んでごまかした。仕上げに薄くチークをのせて、笑顔を浮かべてみる。

 今日のファッションは、オフホワイトのブラウスに、ネイビーのフレアスカート。落ち着いた色合いながらも、どこか可愛らしさを感じさせるスタイル。スレンダーな体型に自然とフィットしていて、ブラウスのボタンをひとつ外すと、胸元にほんの少しのゆとりができた。無理して色気を出しているわけではないけれど、少し位は“女”をアピールしたい。パンティストッキングを穿いてから衣美は「うん、これでよし」とガッツポーズを決めた。

 腕時計をつけ、軽く香水をひと吹き。柔らかな柑橘の香りが、気分を引き締めてくれる。最後にトートバッグを肩にかけて、パンプスを履いて玄関のドアを開けた。
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