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切り裂かれた衣
第3章 衣美と匠~共に過ごした日々~
 二年前──

 衣美は、大学の掲示板で見た「家庭教師募集」のチラシを手に、佐藤家のインターホンを押した。初秋の夕方、涼しい風が吹き、街路樹の葉が軽く揺れている日だった。

 衣美は少し緊張しながら、茶髪を整える。白のブラウスにベージュのチノパン、足元は白のスニーカーとシンプルな装いだ。初めての訪問なのでメイクもナチュラルで清潔感を意識した。インターホンから「はーい!」と元気な声が響き、ドアが開いた。

「こんにちは、家庭教師の渡邉です。よろしくお願いします!」
 衣美が笑顔で挨拶すると、ドアの向こうに中学生くらいの男の子が立っていた。愛らしい顔立ちが少し緊張した様子だった。

「あ、佐藤匠です。よろしくお願いします…。えっと、上がってください」

 匠は高校二年生、十六歳。四人兄弟の長男で、大学受験に向けて英語と数学を強化したいと両親が家庭教師を雇ったらしい。

「おじゃまします」

 衣美はスニーカーを脱ぎ、玄関に上がった。匠の家は郊外の住宅街にある二階建てで、玄関には子供たちの靴がずらりと並び、賑やかな家庭の雰囲気が漂っていた。

「匠君のお母さん、いる?」

「うん、います。母さーん! 先生来たよ!」

 匠がリビングへ続く廊下を歩きながら呼ぶと、奥からエプロン姿の女性が現れた。四十代半ばくらいの佐藤家の母、陽子。

「渡邉さん、はじめまして! ようこそ。匠のこと、よろしくお願いしますね」

 陽子は明るく、笑顔が衣美に安心感を与えた。陽子にリビングに案内されるとリビングには小学生の弟たちが三人、テレビを見たりお菓子を食べたりして騒がしく過ごしていた。

 陽子が「ちょっと静かにしなさい!」と笑いながら言うと、弟たちが「はーい」と適当に返事をする。

「賑やかでごめんなさいね」

 申し訳なさそうに言う陽子に衣美は「いえ」と笑う。

「羨ましいです。こうゆうの」

 一人っ子の衣美にはこんな雰囲気は憧れだった。


 簡単に半年間の契約の内容について改めて説明をしてからさっそく初日の勉強に取りかかることにした。


「じゃあ、匠。先生を案内して」

「うん、わかってるよ。先生、こっちです」

 衣美は「ありがとう、匠君」と笑った。

 匠の耳が少し赤くなった。

(ふふっ……かわいい)

 衣美はそう思いながら微笑んでいた。
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