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母なる果実
第1章 前篇 果実の抱擁
 男はしばらくの間、それを繰り返し堪能していた。
 ――ふと、谷間の中からすこし顔を覗かせて、女に訴えかけるように上目遣いでその瞳を見つめる。彼女は何かを察して、優しく顔を綻ばせながら、こくんと頷いた。
 先程まで無表情だったはずの男は、それを見て瞳だけが少年のようにぱあっと明るくなる。

「可愛い…。」

 女は聞こえるか聞こえないかほどのか細い声で呟いた。
 なんとなしにその声を聞きながら、彼は顔を離して下に垂れている果実に向き直る。
 そして、両手でその豊かな膨らみをようやく持ち上げ先っぽの突起を前に向けて見せると、それをそっと口に含ませて覆い隠してしまった――。

「んっ…。」

 思わず女は息を漏らした。
 彼は優しく、まるで出るはずのない乳をすするかのように、そっと吸い続けた。
 右の果実を一頻り堪能すると、今度は左へ、交互に何度もちゅぱちゅぱと控えめな音を響かせながら――。

 最初こそ声を漏らしたが、彼があまりに優しく包んでくれるので愛おしさが込み上げ、また彼の髪を優しく撫でてやる。

「大きな赤ちゃんみたい…。」

 思わず女が呟く。男ももちろん聞こえていたが、彼女からそう言われることは屈辱でもなんでもなく、むしろ嬉しささえ湧き上がっていた。
 とはいえ、そのまま刺激し続けていると、先っぽの突起はツンと硬くなってしまう。それに気づいた男は、悪戯心からか、口に含んだそれを舌先でちょんちょんと優しく舐めてやる。

「あっ…ん。」

 さすがにその刺激には我慢できず、悩ましい声を漏らす。それをわかっていて男も刺激するし、女も正直いつものことなので恥ずかしさはありつつも、何も言わず仕方ないなと許容していた。
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