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母なる果実
第1章 前篇 果実の抱擁
 女は「んっ。」と少しばかり艶やかな声を漏らしながらTシャツを脱ぎ、くたびれたブラジャーに包まれた白い柔肌を晒すと、ほんのりと彼女の汗の匂いが広がって男の鼻腔をくすぐった。
 布一枚に包まれているその柔らかそうな膨らみは、その姿だけでも圧巻な程、存在感を主張している。
 そのまま背中に手を回してぱちんとホックを外すと、それまで張っていたはずの膨らみが、支えを失って緩んだ下着の上に、たゆんと落ちて溢れそうになる。すかさず女はそれを片手で支えた。

 一つ一つの所作に、彼の視線が痛いほどに突き刺さる――けれど、いやらしさは一切感じない。その清らかさがあるからこそ、こうして気兼ねなく素肌を晒せるのだと、女はしみじみと思った。

 溢れそうになる膨らみを支えながら、下着をゆっくりと剥がしていき、最後に支えていた腕を外すと――抑えるものを完全に失った豊満で柔らかな二つの果実は、そっと重力に従い、静かにゆさゆさと揺れながら男の前に露わになった。

「どうぞ?」

 彼女がしっとりと優しく声をかける。男の視線は、どこか夢を見ているようだった。まるで、美術館で一枚の絵画を前に佇む人のように――息を呑み、見入っていた。

 若々しい肌の張りとは対照的に、その重たげな果実は真下へと引かれ、先端の色づいた突起も静かに垂れていた。それを囲う栗色の輪は、果実の大きさをさらに強調させるように大きく広がっていた。

 男はごくりと息を飲み、そっとその豊かな二つの膨らみに両手を伸ばし、静かにその温もりに触れる。
 成人男性の片手ですら到底収まらない程の大きさ――柔肌に指を食い込ませると、ほのかに反発してくるのが心地よい感触だった。
 そのまま、谷間に顔を埋め、先ほどは叶わなかった深みへ、そっと踏み込んでいく。Tシャツを脱いだ時からほんのり感じていた匂いが、より一層男の鼻腔を刺激し、柔らかな感触と相まって天にも昇りそうな程、蕩けてしまっていた。

「よし、よし…。」

 その様子を見ながら、再び女は彼の髪を優しく撫でた。その優しい手つきでさえ、男を蕩けさせるのに十分な力を持っていた。
 両の掌で果実をそっと包み込み、時おり指をほどいては、また優しく抱き寄せる――温かい谷間の中でゆっくりと顔を左右に揺らし、甘い香りを探すように、鼻をすんすんと鳴らした。
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