この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
母なる果実
第3章 番外 果実の反芻
 枕を手に取り、胸の上に抱え込んて顔を埋める。そして、うーうー…と唸るようなこもった声を小さく響かせた。身体を落ち着きなく揺らし、何度かのっそりと寝返りもうっていたが、突然、動きがぴたりと止んだ。
 しんとした室内に、またしばらく時計の秒針だけが響くなか、女は深いため息をつく。

「最近、来てくれないな…。」

 募る寂しさが滲むように、ぽつりと呟いた。忙しい立場だと知っているし、あまり迷惑をかけたくないとも思っている。それでも、この唐突にできた胸の空洞は一人ではどうしようもなくて――焦がれるように、また一つ深いため息を零した。
 ふと、枕を胸の下にあてがい、豊かな膨らみを支えながら、ゆっくりと立ち上がる。そして、机のスマホに近づいて画面を覗き込むと、指先を滑らせて連絡先をめくりはじめた。やがて、彼の名前のところで、指をぴたりと止める。

 固まったように立ち尽くしたまま、じっと画面と睨めっこする。その名前に指を触れかけては止めて、また伸ばしては引っ込めて…そんなことを繰り返すうちに、女は勢いよく首を横に振った。そのまますっと上体を起こし、胸元を庇いながら再びベッドに横になってしまう。

 仕事の邪魔しちゃダメだよね――それが彼女の想いだった。

 枕を持ち直して顔を埋め、女はおもむろにすんすんと鼻を鳴らす。そして突然思い立ったように起き上がると、ベッドの掛け布団やブランケット…あちこちを犬のようにくんくんと嗅ぎ始めた。

「さすがに残ってないか、何週間も前だもんな…くそう。」

 眉をしかめながら静かにぼやいた。どうやら、彼の匂いが残っていないかを探しているらしい。ベッドから立ち上がると、部屋の至る所に脱いだままになっていた服を拾っては嗅ぎ、拾っては嗅ぎ…。
 結局ほぼ全て拾いきったが、どこにも彼の痕跡は残っていなかった。すっかりしょげた顔をして、心なしか身体を小さくさせながら脱衣所へと歩いていく。
/16ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ