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母なる果実
第3章 番外 果実の反芻

枕を手に取り、胸の上に抱え込んて顔を埋める。そして、うーうー…と唸るようなこもった声を小さく響かせた。身体を落ち着きなく揺らし、何度かのっそりと寝返りもうっていたが、突然、動きがぴたりと止んだ。
しんとした室内に、またしばらく時計の秒針だけが響くなか、女は深いため息をつく。
「最近、来てくれないな…。」
募る寂しさが滲むように、ぽつりと呟いた。忙しい立場だと知っているし、あまり迷惑をかけたくないとも思っている。それでも、この唐突にできた胸の空洞は一人ではどうしようもなくて――焦がれるように、また一つ深いため息を零した。
ふと、枕を胸の下にあてがい、豊かな膨らみを支えながら、ゆっくりと立ち上がる。そして、机のスマホに近づいて画面を覗き込むと、指先を滑らせて連絡先をめくりはじめた。やがて、彼の名前のところで、指をぴたりと止める。
固まったように立ち尽くしたまま、じっと画面と睨めっこする。その名前に指を触れかけては止めて、また伸ばしては引っ込めて…そんなことを繰り返すうちに、女は勢いよく首を横に振った。そのまますっと上体を起こし、胸元を庇いながら再びベッドに横になってしまう。
仕事の邪魔しちゃダメだよね――それが彼女の想いだった。
枕を持ち直して顔を埋め、女はおもむろにすんすんと鼻を鳴らす。そして突然思い立ったように起き上がると、ベッドの掛け布団やブランケット…あちこちを犬のようにくんくんと嗅ぎ始めた。
「さすがに残ってないか、何週間も前だもんな…くそう。」
眉をしかめながら静かにぼやいた。どうやら、彼の匂いが残っていないかを探しているらしい。ベッドから立ち上がると、部屋の至る所に脱いだままになっていた服を拾っては嗅ぎ、拾っては嗅ぎ…。
結局ほぼ全て拾いきったが、どこにも彼の痕跡は残っていなかった。すっかりしょげた顔をして、心なしか身体を小さくさせながら脱衣所へと歩いていく。
しんとした室内に、またしばらく時計の秒針だけが響くなか、女は深いため息をつく。
「最近、来てくれないな…。」
募る寂しさが滲むように、ぽつりと呟いた。忙しい立場だと知っているし、あまり迷惑をかけたくないとも思っている。それでも、この唐突にできた胸の空洞は一人ではどうしようもなくて――焦がれるように、また一つ深いため息を零した。
ふと、枕を胸の下にあてがい、豊かな膨らみを支えながら、ゆっくりと立ち上がる。そして、机のスマホに近づいて画面を覗き込むと、指先を滑らせて連絡先をめくりはじめた。やがて、彼の名前のところで、指をぴたりと止める。
固まったように立ち尽くしたまま、じっと画面と睨めっこする。その名前に指を触れかけては止めて、また伸ばしては引っ込めて…そんなことを繰り返すうちに、女は勢いよく首を横に振った。そのまますっと上体を起こし、胸元を庇いながら再びベッドに横になってしまう。
仕事の邪魔しちゃダメだよね――それが彼女の想いだった。
枕を持ち直して顔を埋め、女はおもむろにすんすんと鼻を鳴らす。そして突然思い立ったように起き上がると、ベッドの掛け布団やブランケット…あちこちを犬のようにくんくんと嗅ぎ始めた。
「さすがに残ってないか、何週間も前だもんな…くそう。」
眉をしかめながら静かにぼやいた。どうやら、彼の匂いが残っていないかを探しているらしい。ベッドから立ち上がると、部屋の至る所に脱いだままになっていた服を拾っては嗅ぎ、拾っては嗅ぎ…。
結局ほぼ全て拾いきったが、どこにも彼の痕跡は残っていなかった。すっかりしょげた顔をして、心なしか身体を小さくさせながら脱衣所へと歩いていく。

