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燃えて、おぼれて、尽き果てるまで ~白く滲んだスターマイン~
第1章 再会 ~東恵比寿の病院~

◆第1章
「繰り返します。546番の方…」
少しいらだちの声色になって投薬窓口からの呼び出しが待合ホールに響いた。
それからすぐに繰り返して
「いらっしゃいませんか? お名前でお呼びします。
番号札546番 キノミヤさま、キノミヤエツコさま、精算窓口までお越し下さい。」
『来宮悦子…』
同じ精算窓口で順番待ちをしていた伊野上遼一(イノカミ リョウイチ)にははっきりとそう聞こえて、思わず開いていた文庫本から顔を上げた。
100床を超える大きな総合病院である。
キノミヤはあまりない苗字だが、名前のエツコまで同じなのは伊野上にとっては忘れられない人の名前で、顔を上げたまま周囲を注意深く見渡した。
視線が左右を一往復したそのとき、右側の柱の陰から小走りにこちらへ向かってくる女性を見つけた遼一の開いた口からは思わず小さく「あっ」と声が出た。
それはまぎれもなく20年前の高校生だった頃、あこがれを寄せたまま卒業式で見送らなければならなかった2年上級の来宮悦子、いや旧姓茅原(カヤハラ)悦子と思え、彼は窓口で説明を聞いている彼女の後ろ姿を、過去の記憶と照らし合わせながら確認するように見つめていた。
小刻みにうなずきを繰り返してから振り返ったその女性の正面の顔をはっきり捉えた彼は、迷うことなく席を立ってエントランスへ向かう彼女を追った。
「繰り返します。546番の方…」
少しいらだちの声色になって投薬窓口からの呼び出しが待合ホールに響いた。
それからすぐに繰り返して
「いらっしゃいませんか? お名前でお呼びします。
番号札546番 キノミヤさま、キノミヤエツコさま、精算窓口までお越し下さい。」
『来宮悦子…』
同じ精算窓口で順番待ちをしていた伊野上遼一(イノカミ リョウイチ)にははっきりとそう聞こえて、思わず開いていた文庫本から顔を上げた。
100床を超える大きな総合病院である。
キノミヤはあまりない苗字だが、名前のエツコまで同じなのは伊野上にとっては忘れられない人の名前で、顔を上げたまま周囲を注意深く見渡した。
視線が左右を一往復したそのとき、右側の柱の陰から小走りにこちらへ向かってくる女性を見つけた遼一の開いた口からは思わず小さく「あっ」と声が出た。
それはまぎれもなく20年前の高校生だった頃、あこがれを寄せたまま卒業式で見送らなければならなかった2年上級の来宮悦子、いや旧姓茅原(カヤハラ)悦子と思え、彼は窓口で説明を聞いている彼女の後ろ姿を、過去の記憶と照らし合わせながら確認するように見つめていた。
小刻みにうなずきを繰り返してから振り返ったその女性の正面の顔をはっきり捉えた彼は、迷うことなく席を立ってエントランスへ向かう彼女を追った。

