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独りの部屋
第3章 灯りの向こう、指の熱
カーテンの隙間から、街の灯りが静かに差し込む。
淡い橙が、彼の肩をなぞるように揺れていた。

――好きって、こんなに静かなんだ。

彼の指が、私の鎖骨をそっとなぞる。
爪を立てるでもなく、ただ、そこに在ることを確かめるみたいに。
唇が、肌に落ちる。音を立てない、柔らかな口づけ。
それだけで、胸の奥がきゅっと疼いた。

「…触れても、いい?」
囁きは、私の耳たぶの裏で震えた。
答えるより先に、もう彼の手は、私の太腿にかかっていた。

ゆっくりと、慎重に。けれど確実に、布をずらしていく。
冷たい空気に晒された肌の上を、指がなぞる。
ぬるく熱い感触が、肌の奥へ染み込んでいくようだった。

「そんな顔するんだね」
私の頬に落ちた声は、少し笑っていて、でもどこか切なげだった。

唇が胸に触れた瞬間、思わず指がシーツを掴んだ。
それを見逃さず、彼はゆっくりと、口づけの痕を増やしていく。
右に、左に、甘噛みと吐息が交互に舞い降りる。

まるで、私という夜を一枚ずつ、ほどいていくようだった。
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