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独りの部屋
第27章 【夜の端で、崩れる】

最終電車。
酔いの残るぼんやりした頭で、彼女の隣に座っていた。
職場で、決して隙を見せない女上司。
指示は的確、言葉は端的。
そんな彼女が、今日に限って少しだけ酒に酔っている。
「ねえ、寄っかかっていい?」
小さな声。
うなずく間もなく、肩にそっと重みがのる。
コートの襟越しに、甘い香りが鼻をかすめた。
彼女の指が、膝の上に置かれた俺の手に触れる。
そのまま、ゆっくりと、絡め取られた。
「なんか……手、大きいね」
その声は、まるで全身をなぞるように響いた。
次の瞬間、俺の手が導かれる。
彼女のコートの裾の奥。
まるで彼女の意思に引きずられるように、
指先が、柔らかく湿った布に触れた。
息が止まりそうになった。
でも、彼女は逃げない。
むしろ脚が、わずかに開かれていく。
「声、出したら……ばれるね」
俺の耳たぶをくすぐるように囁きながら、
彼女は、俺の指の動きに身を預けてくる。
最終電車の揺れにまぎれて、
密やかな音と、体温が漏れ出す。
この女の、こんな顔――
誰も知らない。
だけど今、俺だけが知っている。
ドアが開く。
誰かが乗ってくる。
彼女は脚をきゅっと閉じ、俺の指を奥に挟んだまま、
無言で、俺を見上げて笑った。
それだけで、全身が焼けるように熱くなった。
完
酔いの残るぼんやりした頭で、彼女の隣に座っていた。
職場で、決して隙を見せない女上司。
指示は的確、言葉は端的。
そんな彼女が、今日に限って少しだけ酒に酔っている。
「ねえ、寄っかかっていい?」
小さな声。
うなずく間もなく、肩にそっと重みがのる。
コートの襟越しに、甘い香りが鼻をかすめた。
彼女の指が、膝の上に置かれた俺の手に触れる。
そのまま、ゆっくりと、絡め取られた。
「なんか……手、大きいね」
その声は、まるで全身をなぞるように響いた。
次の瞬間、俺の手が導かれる。
彼女のコートの裾の奥。
まるで彼女の意思に引きずられるように、
指先が、柔らかく湿った布に触れた。
息が止まりそうになった。
でも、彼女は逃げない。
むしろ脚が、わずかに開かれていく。
「声、出したら……ばれるね」
俺の耳たぶをくすぐるように囁きながら、
彼女は、俺の指の動きに身を預けてくる。
最終電車の揺れにまぎれて、
密やかな音と、体温が漏れ出す。
この女の、こんな顔――
誰も知らない。
だけど今、俺だけが知っている。
ドアが開く。
誰かが乗ってくる。
彼女は脚をきゅっと閉じ、俺の指を奥に挟んだまま、
無言で、俺を見上げて笑った。
それだけで、全身が焼けるように熱くなった。
完

