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誰にも言えない、紗也香先生
第9章 雨あがり

朝靄に包まれた小道を、ふたり並んで歩いていた。
森の木々は雨に濡れたままで、葉先から雫がぽたり、ぽたりと落ちる。
空気はひんやりしているのに、彼の隣にいると、それだけで心が温かくなってくる。
「クラスに……友達、いないの?」
ぽつんと、私は聞いていた。
彼は前を見たまま、短く答えた。
「いるよ」
その言い方が、あまりにも自然で、私は少しだけほっとした。
でも、次の言葉は、聞いちゃいけない気もして──
けれど、口が勝手に動いてしまう。
「好きな子……いる?」
足元の落ち葉を見つめる私。
返事はすぐには来なかった。
あ……って、思った。
空気が一瞬だけ、張り詰めた気がした。
「いないよ」
それだけで、私は胸の奥に、ぽっと灯りがともったような気がした。
嬉しくて、照れくさくて、でも、どこか切ない。
「いつも、自分で料理してるの?」
「コンビニかな」
やっぱり、彼の声はいつも通り。でも、それでいい。
その中に、ちゃんと彼がいるって、私は知ってるから。
「……今度、先生の手作り弁当、学校で食べる?
こう見えても……けっこう得意なんだから」
彼の足がほんの少し止まり、横を向いた。
そして、ふっと、笑った。
「うん」
その笑顔が、もう、反則みたいに可愛くて、
私は思わず、彼の肩に顔を寄せてしまった。
「……もう、そういうの、ずるいんだから」
くすぐったいようなぬくもりが、頬に伝わる。
肩越しに見えるふたりの影が、朝霧の中でゆらいでいる。
虫の鳴く声だけが、静かにふたりを包む。
私は小さく微笑んで、彼にそっと言った。
「……もう少し、歩こうか」
そしてまた、ふたりで並んで歩き出す。
森の奥へ、まだ続く静かな時間の中へ──。
森の木々は雨に濡れたままで、葉先から雫がぽたり、ぽたりと落ちる。
空気はひんやりしているのに、彼の隣にいると、それだけで心が温かくなってくる。
「クラスに……友達、いないの?」
ぽつんと、私は聞いていた。
彼は前を見たまま、短く答えた。
「いるよ」
その言い方が、あまりにも自然で、私は少しだけほっとした。
でも、次の言葉は、聞いちゃいけない気もして──
けれど、口が勝手に動いてしまう。
「好きな子……いる?」
足元の落ち葉を見つめる私。
返事はすぐには来なかった。
あ……って、思った。
空気が一瞬だけ、張り詰めた気がした。
「いないよ」
それだけで、私は胸の奥に、ぽっと灯りがともったような気がした。
嬉しくて、照れくさくて、でも、どこか切ない。
「いつも、自分で料理してるの?」
「コンビニかな」
やっぱり、彼の声はいつも通り。でも、それでいい。
その中に、ちゃんと彼がいるって、私は知ってるから。
「……今度、先生の手作り弁当、学校で食べる?
こう見えても……けっこう得意なんだから」
彼の足がほんの少し止まり、横を向いた。
そして、ふっと、笑った。
「うん」
その笑顔が、もう、反則みたいに可愛くて、
私は思わず、彼の肩に顔を寄せてしまった。
「……もう、そういうの、ずるいんだから」
くすぐったいようなぬくもりが、頬に伝わる。
肩越しに見えるふたりの影が、朝霧の中でゆらいでいる。
虫の鳴く声だけが、静かにふたりを包む。
私は小さく微笑んで、彼にそっと言った。
「……もう少し、歩こうか」
そしてまた、ふたりで並んで歩き出す。
森の奥へ、まだ続く静かな時間の中へ──。

