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わたしの昼下がり
第6章 スイッチ
 うれしいと思いましたが、明日はゴミの回収日。夫や娘たちがいつも通りに家を出て行ったとしても、雨が降ったりしなければいつものように井戸端会議が開かれてしまうことでしょう。△井が団地を訪ねる頃には、わたしの家に来る前に訪ねたという□田さんもほぼ間違いなくその場にいるでしょう。そのことも含めて△井に伝えます。

 「なるほど。あの奥さんに見つかったらあしらうのが大変そうですね。結構、好きそうな感じでしたから」

 井戸端会議で△井が訪ねてきたときのことを話している□田さんの表情が思い出されます。

 「井戸端会議が終わるのは何時くらいですか?」
 「ゴミの回収車が来るのは9時くらいなのですけど、たまに遅く来たりすることもあります…」
 「奥様方に目を付けられたら何かとやりにくいですからね。わかりました。では、こうしませんか?」

 △井はすぐにアイデアを出しました。

 「9時前くらいには団地に来ていますから、奥さんの都合がよくなったらベランダに目印を出してください。色のついたタオルとかバンダナとか」

 段取りをつけてくれる△井が頼もしく思えました。やはりあちこちで同じようなことを積み重ねてきているのでしょう。わたしはタンスの引き出しを開けるとピンク色のタオルを取り出して△井に見せました。

 「いいですね。幸せのピンク色のタオルだ。物干し竿にこれが見えたらお訪ねしますよ」
 「よろしくお願いします…」

 気が付けば『よろしく…』などとお願いまでしてしまっていることに戸惑いながら、わたしは△井がどれぐらいの相手とこういうことをしているのか気になりました。

 「あの…」

 そんなわたしの思いを察したのか、△井はわたしを抱きしめました。

 「奥さんはすばらしいです。朝からたっぷり愉しみましょうね、奥さん」

 △井に抱きしめられそう囁かれると、野暮なことは訊かない方がいいと思ってしまいました。明日も朝から逢えるというのですから。そしてキスをしました。△井が舌を絡めつかせてきます。わたしも舌を絡めつかせます。舌を介して『わたしもそう思っています。朝からたっぷり愉しみたいです』と△井の舌に伝えるように。『チュバッ、チュバッ』という音が漏れました。
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