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わたしの課外授業
第3章 久しぶりに辞書を引く
 「先生、ちょっとききたいことがあるんですけど」
 「なあに?」

 教科準備室にSクンが訪ねてきた。Sクンは見た目はどちらかといえば草食系。飄飄とした感じ。
 
 「先生は旦那さんとセックスするとき挿れて欲しくなったらなんて言いますか?」
 「挿入して欲しいことをどう伝えるかってこと?」
 「そうです」
 「うーん…お願いしたことはないかなぁ」

 夫はいつもこちらが頼む必要もなく勝手に挿入してくるから。

 「わざわざ言わなくてもなりゆきで…っていう感じ」
 「『阿吽の呼吸』ってやつですか?」
 「まあ、そういえばそうね」
 「『ぶち込んで』ってお願いしたことないですか?」
 「『ぶち込んで』ねぇ。わたしはないかも。ちょっと芝居がかってもいるわよね。まあ『いれて』くらいは言ったことはあるような気もするけど」
 「そうなんですよね。ふつう『いれて』とかですよね」
 「漫画にでも出てきたの? 『ぶち込んで』はちょっと粗野でお下品な感じもするわね」

 粗野でお下品なのは別にきらいじゃないけど。

 「この前、ママがそう言ってたんです」
 「あら、おかあさんが?」

 それを先に言ってよ。『粗野でお下品な感じ』なんて言っちゃったじゃない…。それにしてもSクンのおかあさんは聡明な感じ。絵に描いたような良妻賢母。そんな『お下品』な言葉を使うなんて意外。

 「おかあさんは誰とお話しなさってたの?」
 「電話で誰かと話してた。たぶんセックスフレンドのおじさん」

 あのおかあさんが、セックスフレンドとそんな会話をしているなんてもっと意外。

 「Sクンはそれ聞いててどう思ったの?」
 「なんかゾクってくる感じはあったんですけど、ボクの性欲を処理してくれるときはそんなこと言われたことなかったので。なにか方言とかなのかな? とか思ったりして」
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