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第32章 再会

　　　　もう、夫のことなんて
　　　　どうでもよかった。
　　　　ただ、ただ、嬉しい。
　　　　ずっとわたしのことを
　　　　思い続けてくれた彼。
　　　　その彼が言うなら、
　　　　その意思に従うわ。

「ごめんね。お守りにならなくて」

実雅子は佐川に頭を下げた。そう、佐川は〇中学には合格できなかった。

「悪い。〇中学の受験は自転車で向かったんだ。近いから。だから、これを持って行ったのは、大阪○○学院中学の受験だったんだ。だから、お守りになったのさ。高校受験も、大学受験も。全部、合格できたよ」

佐川が笑いながら、実雅子の頭を撫でた。

　　　　わたしってバカだ。
　　　　そうよ。阪急沿線に住んでいて
　　　　阪神沿線の学校を受験するのに
　　　　電車で行くわけが。。。
　　　　それなのにパスケース。
　　　　まるで、落ちて遠くの
　　　　学校に電車通学しなさいって
　　　　言っているようなものじゃない。

後悔した実雅子。

「ごめんね。まるで電車通学を勧めたみたいで」

と、謝った。

「いいんだ。生まれて初めて貰った家族以外からのプレゼントだったから、嬉しかったし。それに、俺がバカだっただけだから」

と、笑う佐川。

「そんなことないでしょ。模試でもA判定だって言っていたのに」

と、実雅子が思い出しながら話すと、

「A判定だったけど、本番で上がってしまって。自分で自分を追い込んでしまった。ここで合格しないと、お前と付き合えないって思うと、必死になり過ぎて」

と、失笑する佐川。

　　　　そうなのね。
　　　　ある意味、わたしが
　　　　プレッシャーを
　　　　掛けたってことよね。

「ごめんね。わたしが最初から受験の結果なんて関係なしに付き合うって言っていれば」

後悔しきりの実雅子。

「そんなことはないさ。そもそも、〇学園で頑張れたのも、お前と一緒だったからさ。お前の前で自慢したくて、勉強を頑張っていた結果、あのランクまで至ったんだと思う。5年生のころ、成績が頭打ちで、お前に抜かれそうで、一年も早くから〇学園に通っていたのに、負けられない、いいところを見せたいってだけで頑張れたからな」

と、実雅子を見つめて微笑む佐川。