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第32章 再会

　　　　そういうものなのね。
　　　　そうね。恋愛なら
　　　　お金が絡むのは
　　　　おかしいわ。
　　　　その気にさせるために
　　　　通い続けさせて
　　　　儲ける仕組みなのね

なんとなく、ホストとかそういう夜の店の構図がわかった様な気がした実雅子。

「だから、俺が『好きだ』『愛している』『恋しい』と言える相手は、お前だけさ」

佐川が実雅子を見つめた。

　　　　マジマジと言われて、
　　　　気が付いた。
　　　　夫からこの三つのフレーズは
　　　　聞いたことがなかった。
　　　　夫が言ってくれたのは、
　　　　『可愛いね』くらい。
　　　　あとは、褒め言葉は多かった。
　　　　料理を作れば、『美味しい』。
　　　　ゴルフをすれば、『上手だね』。
　　　　あと、多いのは、
　　　　『ありがとう』だった。
　　　　そう思うと、夫は、
　　　　わたしを好きなのだろうか？
　　　　愛してるのだろうか？
　　　　恋しいと思ってくれている？
　　　　いろいろな疑問が湧いてきた。
　　　　何かをしてもらって
　　　　『ありがとう』とは、
　　　　他人でも言う。
　　　　ご飯を作ってもらえば、
　　　　誰でも『美味しい』という。
　　　　ゴルフもパー以上で
　　　　ホールアウトすれば、
　　　　『上手だね』は誰でも言う。
　　　　趣味も価値観も、いろいろ
　　　　合致していると思っていた夫。
　　　　でも、それって普通？
　　　　違う。言葉に出さないだけで、
　　　　夫は、わたしを愛してるはず。
　　　　恋しいと思ってくれているはず。
　　　　違う？声に出ないということは、
　　　　思っていないということ？

最近の素っ気ない夫の態度を思い出した実雅子。

　　　　今日も、わたしを
　　　　放ったらかして・・・。
　　　　打ち合わせだと・・・。
　　　　打ち合わせにわたしが
　　　　同席したらダメなの？
　　　　一度も、同席したことがない。
　　　　だから、どこのハウスメーカー、
　　　　どこの工務店で
　　　　話を進めているのか、
　　　　何もわたしは知らない。
　　　　こんなの夫婦と言えるの？

疑問が次々に湧いてきた実雅子。