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第32章 再会

　　　　それは、わたし？
　　　　わたしに会うために
　　　　不登校をやめた？

言われてみれば、三年生の新学期。担任だった谷山弘美先生が、

「佐川くん。三年生は真面目に通学するのよ。わたしは小川先生みたいに甘くないから」

と、時代錯誤だと感じるようなことを彼に言っていた。

「教科書を貰いに来ただけですよ。明日から休みますから」

と、彼は、反論していた。先生が怒って、

「あとで、職員室に来るように！」

と、彼に怒鳴っていた。

　　　　「ミス・ヒステリック」と
　　　　保護者にあだ名をつけられていた
　　　　谷山先生の真骨頂だったけど、
　　　　あの先生が理由で
　　　　不登校になった児童もいたはず。

そんなことを思い出しながら、

　　　　彼のあの態度は、
　　　　もしかすると、ある種の
　　　　照れ隠しだった？
　　　　わたしに構ってきて小言。
　　　　あれは不器用な彼なりの
　　　　コミュニケーションだった？

「クラスメートの女子って、わたし？」

と、実雅子はわかっていたけど、確認した。

「この話の流れでそれ以外にあるか」

と、答えた佐川。

　　　　あの頃・・・
　　　　彼につらく当たられた
　　　　記憶があった。

「その割には、睨まれた記憶しかないし、酷いことも言われたわ」

実雅子が不満そうに言うと、

「素直になれなかったんだよ。というか、自分の感情が何なのかすらわかっていなかった。今なら、これが『恋』だってわかるんだけど」

と、わかってくれという感じを出す佐川。

「俺にとっては初恋の相手はお前なんだ。それは、間違いない。そして、その思いは今も変わらない」

と、熱く語る佐川。

「やっぱりホストね。お上手」

と、笑ってごまかそうとする実雅子。

「言っておくけど、俺は、ホストをしているときですら、女性に『好きだ』とか『恋しい』『愛している』なんて言葉は言ったことはない。精々、『相性がいいね』『面白いね』『楽しいよ』くらいだった。ま、それでも珍しいことだったけどね。『好き』とか『恋』だとか、『愛』だとかは、気軽には言えない。っていうか、ホストは言ってはいけないんだよ。それを言ったら、女は満足して金を払ってくれなくなるからね」

と、佐川が笑った。