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第30章 ホスト社員

佐川の話を聞いた重村定勝や反町茂、関壮輔、清水志温、サラン、佐藤慎二はほぼ同じことを思った。

　　　　今の実雅子なら
　　　　佐川の誘いに応じる
　　　　可能性は高い。
　　　　俺たちが出る幕はない
　　　　しかし、それでは、
　　　　今までの・・・

「佐川さんは、実雅子を寝取るだけ？」

サランが聞いた。

「違うな。アイツの望みを叶える一助になるなら、俺はこの身を捧げるつもりさ」

佐川が話した。『身を捧げる』か、ホストらしい言葉だと思った重村定勝や壮輔、志温。

「というか、佐川さんは独身なの？」

と、聞いたサラン。

「そうだ。俺に家族なんていらない」

と、フッと笑う佐川。ホスト色に染まった雰囲気が漂う佐川。

「実雅子を想っているの？」

「どうだろう。想うというか、償いたいだけさ。小さい頃、いつも俺を慰めてくれたのに、いつも俺は自分に正直になれなかった。そのたび、俺はアイツを傷つけていたからな」

と、渋く笑った。

「でも、あなたが知っていた実雅子で居続けているかしら？」

サランが笑った。

「大丈夫さ。篠崎さんから、関さんからのメッセージは読んだ。凡そのところはわかっている。苦しんでいる実雅子を解放してやりたい。クソみたいな旦那から。『配偶者』という言葉は、対になって向かい合う位置に配するという意味だ。それがわかっていない。対になって向かい合うとは睦み合い、抱き合い、一体になること。要するにSEXをする相手を指すのさ。それがわからない男に女を妻にする資格はない。あの男から実雅子を奪ってやる」

明らかな憎しみが宿る眼。佐川が憎むのは、実雅子の夫、村上義隆だと、男たちもサランも悟った。

「しかし、実雅子さんが、義隆氏を愛している、離れたくないと言ったら、どうするんです？」

聞いたのは、ずっと黙っていた斎田慎太郎。

「もし、そう言われたら、従うしかない。でも、そうなるでしょうか。あの男は、アイツを持て余して、他の男にSEXの相手をさせてもいいと思っているのですよ。それなのにアイツがそんなことを言うとは思えない」

と、笑った佐川。どうなのか・・・。男たちもサランも実雅子の心のうちはわからなかった。