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第29章 夫婦円満には不倫

「ところで先ほど、『一つには、我々には奥様にアプローチする術がなかったこと』と仰ったが、もし奥様にアプローチする術があったらどういう方法があるのですか？」

反町茂が聞いた。それは聞きたいというのが場の空気だった。

「あればですか。それは容易です。義隆氏と異なり、奥様は、現状に不満を抱いておられるわけですから。不倫するように持って行きます」

と、簡単だという風に話す篠崎。

これだけ、男性陣が揃いながら、そんな方向には持って行けそうにない状況だけに、容易だと言われては立つ瀬がないという空気が流れた。

「容易ですか？」

と、聞く反町茂の声に微かに険があったが、気にせずに、

「うちに、佐川翔太という男がいます。元は四鬼魔-翔という名前でホストをしていた男ですが、女性の扱いは巧みです。我が社の女性のお客様へのサービスを担当しております。この男なら」

と、話す篠崎。

「と言っても、さきほど、義隆氏には、御社のレディースチームは」

と、言いかけた反町茂。

「ま、そうですが、ここに来る前に、関さんから連絡を頂いたので、義隆氏の奥様の名前が実雅子さんとわかりました。変わった漢字です。というか、非常に読みにくい名前です」

と、話す篠崎。

「それが？」

と、話をサッサと勧めてくれと言わんがばかりに、反町が言うと、

「それがですね。その佐川が言うには、その名前に思い当たる女がいるというのですよ。『ホスト時代の客か？』と聞いたのですが、違うそうで、なんでも、小学校時代に同級生だった女の子に『妹尾実雅子』という名前が」

と、言いかけたところで、真っ先にサランが、

「実雅子だわ」

と、話した。実雅子の旧姓は妹尾。

「小学生の同級生だとして、何が？」

と、聞く重村定勝。

「相当、仲が良かったそうで、『実雅子のことなら何でも知っている』と言っておりまして、しかも、10年ほど前にも会ったことがあるそうです」

と、篠崎が話すと、

「10年ですか」

と、話にならないという風に話した反町茂。

「しかも、その前は、いくら仲が良くても小学生じゃ話にならない」

と、笑う志温。

「実雅子も、旦那さんに負けず劣らず、貞操観念は強そうですよ。浮気なんて容易でしょうか？」

と、話したのは、壮輔。