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なりすました姦辱
第4章 隔絶された恋人
 雨は上がっていた。

 連日の降り続いた反動なのか、強い日射しが容赦なく照りつけ、湿った世界を乾かし、まとわりつくような熱気を立ち昇らせていた。

 つまり外だ。

 目の前に横たわっている水面に、無数の光の粒が弾けている。瞼を上げさせたのはこいつだ。湿熱の中に嗅がれるのは、土と草の臭い。手の中には、半分ほど食べた菓子パンの袋が握られている。

 知らず知らずの間に、なだらかな堤防の中腹に設けられている河川敷のベンチに座っていた。空腹がアパートから体を連れ出して食料を調達させ、バトンタッチする形でやってきた睡魔が意識を手放させたのだろう。

 ふと見ると、堤防下の自転車専用道の少し離れた場所で、スーパーのビニール袋を籠に入れたママチャリを向かい合わせに駐め、高年の主婦二人が、跨ったままおしゃべりをしていた。……時々、こちらを窺っては、片手の甲を口元に手を当て、何か話をしている。

(そんな心配しなくても、何もしねえよ)

 重い体を持ち上げ、堤防を上ったところにあった道を歩み始めた。

 アスファルトの熱がじりじりと靴底から伝わってくる。アンダーシャツの中で、背を汗が流れ落ちている。

 前方から、一組のカップルがやってきた。

 ところで今日は何曜日なのだろう。
 この二人に訊いてみようかとも思ったが、

「散歩デートはいいんだけどさぁ、ちょっと日射しが強すぎだよ。肌が心配」
「悪かったよ。でもいくら俺でも、天気はどうしようもないんだ」
「それは、そうだけど。っていうか今の私、前髪とか変になってない? ファンデも崩れたりしてないよね? もしそんなだったら、もう立ち直れない」
「大丈夫ですよ、お嬢さん。大変、おキレイです」
「なら今日あと10回は言ってね? ……あーでも、虫とか飛んで来たら、それは怒るよ? この服気に入ってるもん、止まられたりしたらブチ切れる」
「それも俺にはどうにも。虫サンが飛んでこないように祈っとくよ」

 学生ではなく社会人っぽいから、土曜日か日曜日なのかもしれない。二人はいわゆる「恋人繋ぎ」をして歩いているが、彼女はずっと文句を言い、彼氏は苦笑しながら、逆ギレすることなく全てを受け入れている。ただし彼女も、この男は絶対に逆ギレをしないとわかっているから、何でもかんでも難癖をつけているようだ。これが二人の通常運転で、仲睦まじい証拠なのだろう。
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