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微熱に疼く慕情
第3章 【甘く麻痺していく心情】

(あ、一華〜?見てる?今からだし巻き卵作りたいと思います、上達したとこ見ててね!)
一体、何が楽しくて元カレのクッキング動画を見せられているのか
本人曰く、頼れる男=料理の出来る男らしくて
私に振り向いてもらう作戦みたいだけど
いきなりアポなしで来られたりするよりかはマシかと思い、渋々テレビ電話に付き合ってあげている
私も一人晩酌を家でしながら、
最初は段取りの悪さからイライラしながら見てたけど、今じゃアクシデントばかり起きててお腹抱えて笑ってる
(あー!焦げた!うわ、何これ!)
「ちょっと、何でそうなるのよ、待って、アハハ!」
(笑い過ぎだぞ!味は大丈夫、もうちょっと綺麗に包めたらなぁ〜)
「火が強過ぎたんじゃない?」
(よし、次こそリベンジ、今度作ってあげるよ)
「大丈夫なの?え、私のキッチンそんな汚くされるの嫌なんだけど」
チラッと映った洗い物だらけのシンクにまな板やらお皿やら散乱してる台の上
(ハハハ!見なかった事にして)
時々こうやって動画で撮ったのを送ってきたり、時間が合えばリアルタイムでテレビ電話しながらクッキングしてたりと何かしら元カレとは繋がっている
(今度の土曜、そっち行って良い?)
普通にまた泊まりに来ようとしてくるところがたまにキズ
釘は刺しておいた方が良いんだろうな、と思い立つ
「あのさ、私、彼氏出来たんだよね」
(え、ウソっ)
「ウソつくわけないでしょ」
(え……どんな人?)
「会社の先輩……良い人だよ、優しい」
(マジで付き合ったの?どっちから?)
「それ聞いてどうすんのよ、向こうから告られて…だよ、だからもうあんたと会ってられないの、わかった?」
これでどうにか吹っ切って欲しい
なんて甘い考えかな

